エピローグ

 夕焼けに照らされた山道を走る。

 錦山君は「そろそろ山は飽きました。海が見たいです」と言っていたので、明日にでも日本海と太平洋どちらが好みか聞いてみようと思う。

 サイドカーを見ると、錦山君は目を閉じて眠っていた。不平を言っていたものの結局は折れてくれたので、その隣にはニケが伏せの姿勢でくっついている。

賢いこの犬は身じろぎ一つせず、錦山君の湯たんぽ代わりの仕事を遂行することを決めたようだ。

 前髪は風で乱れて額に陰を落としている。こうして見ると、存外錦山君は甘い顔立ちをしている。


 世界は滅んでしまったけれど、私は今、世界で一番の幸せ者だ。

 他の何に変えても守りたかった人が、こうして隣で穏やかに眠っているのだから。

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僕は先輩と、終末世界で旅をする @kamame893

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