―14― ★好きだと勘違いしてた
「ねぇ、奏生。話があるんだけど」
あの後、オレと椎名は揃って教室へ戻り、注目を浴びながら昼食を食べた。そして、休み時間なのでやることもなく自分の席でボーッと過ごしていると、七皆寧々がオレの席までやってきては話しかけてきた。
基本、寧々が学校で話しかけてくることはない。
なぜならオレたちの関係は内緒だからだ。
「話って何だ?」
戸惑いながらそう口にする。
チラリと椎名のほうを視線だけ動かして見る。気になったのだ。けど、オレたちなんかに興味はないのかそっぽを向いていた。
「ここでは話せない。来て」
そう言われたので、しぶしぶ立ち上がる。
様子を伺うに、寧々はなにかに対して怒っているようだ。
オレが椎名とつきあっていることに対して、怒っているのかもと思うが、なぜそんなことが理由で彼女が怒るのか、オレは全く見当がつかなかった。
人気の少ない廊下にて、寧々は立ち止まる。
「ねぇ、風不死さんとつきあっているって本当なの?」
やっぱりその話題か。
「あぁ、本当だよ」
肯定する。実際には、つきあってなんかいないが幼なじみとはいえ家の借金事情を言うわけにもいかないし、肯定するしかない。
「どういうことなの?」
どうとは? 寧々がなにを伝えたいのかわからない。
「あんたは私のことが好きなんじゃないの?」
冗談ではないことが、寧々の真剣な眼差しが物語っている。
あ? いったいなにを言って? いや、たしかにオレは昔に彼女に告白したんだった。けど、あれは――
「子供のときの話を持ち出してどうしたんだ?」
え? と、寧々は面くらっていた。
「確かに、あのときはお前のことが好きで告白したかもしれないが、今でも好きだとは限らないだろ」
人の感情なんて移ろいやすいものだ。昔好きでも今はそうじゃない。そんなこと誰しもが経験したことあるだろう。
「そうなんだ……」
彼女は納得してくれたのか、そう頷く。
「それで、聞きたかったのはそれだけか? 用が済んだなら教室に戻るけど」
「えぇ、戻っていいわよ」
許可ももらえたことだし、寧々に背を向けて教室へ戻ろうとする。
「寧々は教室に戻らないのか?」
ふと、立ち止まってそう尋ねていた。
「いい。ワタシ行かなくちゃいけない場所があるから」
「そうか」
そういうことなら、オレ一人で教室に戻ろう。
◆
七皆寧々は黙って忠仲奏生が視界から消えるのを待っていた。
さっき奏生に行かなきゃ行けない場所があるなんて言ったが、あんなの大嘘だ。ただ、一人になりたい気分だった。
「意味わかんない……っ」
その場でうずくまる。
他の生徒に見られていたが、そんなの気にする余裕なんてなかった。
陰キャで女友達が一人もいないような奏生に彼女ができるなんて想像すらしていなかった。しかもよりよって、奏生の彼女があの風不死椎名だなんて。
盗られた。
それが寧々を支配する感情だった。
十年以上付き合いのある幼なじみをぽっと出の転校生に奪われた。そう思うと、掻きむしりたくなるぐらいイライラしてくる。
「奏生はワタシにぞっこんだと思っていたのに……」
だから、奏生は毎朝起こしに来てくれるし、家事も手伝ってくれるし、どんなお願いだって聞いてくれた。それは奏生が自分のことを好きだから、それだけ献身的なんだと信じて疑わなかった。
だから、奏生は寧々のお世話を内心喜んでやっているんだと思っていた。
なのに、実際は他に彼女を作ってしまう程度に、奏生は寧々に興味がなかった。
そんなのあり得ないと思う。騙された気分だ。
「う、うぅ……」
目から涙がこぼれてしまいそうだった。
けれど、泣いてしまったらなにかに負ける気がして、必死に涙をこらえる。
もうどうしたらいいのか、寧々にはわからなかった。
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【あとがき】
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