第4話 とうとうバレンタインデー
明けて翌日。
「あ、時透さんおはよう」
「坂本君、おはよう」
その言葉で教室はどよめいた。誰だあれから始まり宇宙人に攫われただの黒魔術で入れ替わっただの、ないことないことざわつきは放課後まで続いた。
まあ俺も後ろで見てないと信じられなかったかも。時康も目を丸くしてまじで? と言っていた。むしろ坂やんが普通に気づいたのはなぜだ?
ただ時透さんの今までの闇イメージが強すぎるのか、時透さんと話をするのはやっぱ俺らくらいでみんな遠巻きに眺めていた。
色々話してると、やっぱり坂やんに魔法陣拾ってもらったのが嬉しかったらしい。あと、坂やんが黒魔術興味あるのかなと思ったとか。それは一応否定しといた。
そんで誤解が解けて、特別な意味はなかったんだっていう残酷な事実は多分時透さんの意識にも浸透して、その結果、なんとなく時透さんが坂やんに話しかけることも少なくなってきて、話すのは大体俺くらいになって、ひょっとしたらチョコを期待してもいいのだろうかとどきどきして迎えたバレンタインデーの当日。
「あの、悠平くん、放課後に時間あるかな」
朝、俺は奇麗にナチュラルメイクした時透さんに放課後に呼び出された。
まじで!? まじで!?
えっと、まじで!?
◇◇◇
そして呼び出されたのは運命のnumber 19。
俺が時透さんを最初に誘ったカフェ。
なんだかめっちゃドキドキして入ると、時透さんは窓際の席で既に俺を待っていた。
「あ、あの、時透さん」
「呼び出しちゃってごめんなさい、学校じゃ恥ずかしくて」
そうだよね、そうだよね。学校じゃはずかしいよね。俺の心臓はバックバク。髪の毛はわざわざ提供してないけど、大丈夫だよね? 俺はオールオッケー。
時透さんはカバンを開ける。そこには黒かわいくラッピングされた手作り感のある箱があって、それを取り出さずにその一つ手前のデパート的包装紙に包まれた小さな箱が取り出された。
そこで、あれ? と違和感。
手作りっぽいそれとは違うの
「ハッピーバレンタイン」
「ありがとう!」
「私、悠平君には本当に感謝してる」
感謝? なんか、不穏な空気。
「悠平君がいないと彼氏に出会えなかった」
彼氏? それは俺じゃなくて?
「あの日。帰りに駅前でナンパされたの。ナンパって初めてでびっくりしたけどお茶をしたら本当にいい人で」
えっと、騙されてない?
「趣味もぴったりあってて今度一緒にサバト行くの」
サバト。
「本当に感謝してる。ありがとう」
……はぁ。
「じゃあ待ち合わせしてるからまた明日学校で」
そう言って、時透さんは自分の飲み物代の小銭を置いて立ち去った。
サバト。
うん、俺はサバトに付き合うのはちょっと。
うーん。見た目はすごい可愛いけど中身はやっぱり時透さん。
…………なんなんだよ! 畜生!
時透さんの他におかんと妹にチョコもらった。おいしかった。気持ち、しょっぱかったけど。気持ちね。
結局のとこ、坂やんは中根さんからチョコをもらった。
それで結局、付き合ってるのかはやっぱりよくわからない、1500円くらいの有名メーカーの市販のチョコ。義理にしては高いけど、スペシャル感はまるでない。俺が時透さんにもらったのとおそろいのチョコ。
俺と時康は頭を抱えた。
でもまあ、坂やんはチョコもらって喜んでたからいいかな、ということにした。
坂やんのデートの予定は未だたっていない。
Fin.
なお、美容院の名前はミスティオーラで公理智樹の美容院。時透さんが彼氏だと思ってるのは、なんか危ないことしてんなと思った円城環が声をかけただけであるが、そのせいで環は周りの奴らにからかわれる羽目になるのだ。
放課後バレンタイン ~東高の愉快な日常 Tempp @ぷかぷか @Tempp
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます