愛蘭のツメクサ
「待たせてしまってすみません」
「ほんとですよ。ま、先輩の事ですから先生の話聞いてなかったとかでしょうけど」
「藜君は昔からよねぇ」
「本当にすみません…」
彼女たちとの関係は、昔から家族ぐるみで仲がいい、としか言いようがない。
幼少期からしょっちゅう遊んでいて、梅雨は妹みたいだと思ってる。
兄(あいつ)に関しては俺が高校に上がると同時に連絡が途絶えた。
なんでも今はアメリカにいるらしい。なんでだろ。
「藜君もいじったことだし、そろそろ本題に入ろうかしら」
「ねぇ先輩、あたしたちと一緒に住みませんか?」
「…………は?」
住む?誰が?俺が?梅雨たちと?
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!」
「や、やっぱり…」
「そうなるわよねぇ…」
「常識的に考えてありえないでしょ?!男なんですよ?俺!実の子でも無いです
し!」
「でも家がないのは事実じゃない」
「た、確かにそうですけど…」
「ちなみに先輩のお母さんからは許可貰ってますよ?」
そう言ってメッセージアプリを見せられる。
母の返答は、『藜が良いって言ったらね?』とある。
時間的についさっきのやり取りの様で、即決しているような速度だ。
あぁ、いい母を持ったものだ…そう思っていると突然ポケットのスマホが震えた。
どうやら母からの様で『避妊はちゃんとしなよ?』とあった。
前言撤回だ馬鹿野郎!
何が避妊は~だよ!そんな関係でもねぇのに!
その感情が顔に出てしまっていたのか、俺以外の三人が笑い出す。
皐月さんは「やっぱり藜君は変わらないのね」と感慨深そうに、
梅雨は「変な顔~」とからかうように、
いつの間にかいた担任は何かわかったように
「年頃だもんな…」
と目を潤ませていた。
きっと三十路付近になって婚活が…いや、考えるのはよそう。
さっきから担任の視線がつらい…
と、現実逃避するのもここまでにして、本気で考えねば。
大家さんにも迷惑がかかるだろうし、ホテル暮らしも正直不便だ。
ということで、次の物件が決まるまでの条件付きではあるもののせっかくの厚意に甘
えることにした。
(仮題)17歳。貰って失くしてまた貰う。 のぼりふじ @kuchinasi3-24-18-13
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