終わらないEvery day

 結局、裏世界は残ったままだった。

 僕はシャングリラやエレボス団長の過去に、裏世界の存在そのものに関する秘密があるものだと思っていたが、それを知っている人間はもういない。ずっとエレボス団長の傍にいたドゥアトさんですら、知らなかった。

 僕たちが持つギフトも、残ったまま。ただ、裏世界に時折現れていたモンスターという存在は、シャングリラが融合によって生み出していたものだったらしく、残っているのを片付ければ一先ずはいなくなるだろうと、疲れた顔のドゥアトさんから聞いた。


『先日、轟音と共に突如として消えた皇居の一部。その原因は今もわかっていません』

「……どうすんのかなぁ、これ」


 自宅でテレビのニュースを見ていたら、こんなニュースが流れてきたので僕はなんとも言えない顔になってしまっている。

 裏世界の皇居周辺で、天変地異を何回も起こしながら最後は小さな超新星爆発まで起こしたのだから、こうなるのも必然なんだけども、裏世界に生きる人間にも表世界修復方法なんて存在しない。


 あの戦いから既に数日が過ぎたが、ドゥアトさんが仮の団長に座ることで青の騎士団は存続することになった。レボリューショニストがいなくなっても、ギフトをたまたま手に入れて悪用する人間が現れない訳がない。そういう声が、青の騎士団内部から大量に出たために、ドゥアトさんは存続を決めたらしい。

 僕も一応、所属してはいるんだけども、これからはあまり裏世界には関わるつもりはない。僕の持っている『時間の掌握』は、それだけ強力であまり使いたくないものなんだ。


「どうするんでしょうねぇー……」

「なんとかするでしょ」


 僕の家のはずなのに、家主である僕以上にくつろいでいる椿と日菜にはもう驚きもしない。

 日菜に関しては、十年近く前に行方不明になり、既に日菜の両親もどこか遠くへと引っ越してしまっているので、このまま表では死んだ人間として生きていくつもりらしい。基本的には裏世界で青の騎士団に協力しながら、僕の家に帰って来る生活で。

 椿は、僕が予想とは違い、青の騎士団を事実上の引退をしている。椿が青の騎士団に入った理由は、元々は僕を守る為だったらしいので、その必要がなくなったのだとか。組織に対する恩はあっても、最終的には僕を選んでしまうので引退した、とか。


「エレオノーラさんは元気にやってますかね」

「さぁ? 案外図太いし、やっていけていると思うよ」

「椿、本当に仲が悪いなぁ」

「誰のせいだと思ってるのかな?」


 エリー……エレオノーラ・エスポジートはイタリアへと帰国した。なんか去り際に「絶対に貴方に会いに戻ってくるから!」と言っていたが、普通に母国で過ごしてくれ。


 結局、裏世界のことは知っている極少数の人間しか知らないままだ。でも、それでよかったのかもしれない。あんな争いに満ちた世界なんて、誰も知らない方がいい。


「さて……学校行くかな」

「行ってらっしゃい、神代君、椿ちゃん」

「うん」


 色々なことがあったけど、僕たちはこうして幼馴染の平穏な生活を取り戻した。これからは、変わり映えのしない生活を噛みしめて生きてみようかな。

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いじめられていたけど社会の裏側では最強の力を手にしてしまいました~何故か女性からのアプローチが激しくなって困っています~ 斎藤 正 @balmung30

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