時を支配するHolder Ⅱ

「お前たちは何もわかっていない……このクズ共が!」

「クズはお前だろう」


 これ以上、シャングリラの話を聞く必要なんて全くない。

 僕は天叢雲剣を手にしたまま、一気にシャングリラの元へと加速する。僕がギフトを使ったことに天叢雲剣が一瞬だけ反応するが、すぐに鎮まる。気分屋のこいつにも呆れてしまうが、シャングリラから八咫鏡を解放するまでの我慢だ。


「おのれっ!?」

「無理だよ、今のお前には、反応もできない」


 シャングリラも優れたホルダーなので、日菜と同様に素の状態でも僕の加速をある程度見切ってくるが、時間を停止させればそんなことは関係ない。シャングリラの元へと至る一歩手前で時間を停止させ、そのまま近づいて胴体に袈裟切り。同時に時間停止が解除されて、シャングリラは痛みに顔を歪めながら距離を取る。


「……その再生能力、三種の神器じゃなかったんだな」


 距離を取った先で、シャングリラは膝をついて大きく息を吐いている。僕の足元には、古い鏡が落ちていた。これで、三種の神器は全てを奪ったことになる。

 恐らくだが、シャングリラが瞬間移動していたのは八尺瓊勾玉の力だったのだろう。だから、今は普通に離れた。


「よくやった。後は私がやろう」


 シャングリラから三種の神器が全て分離されたのを見届けてから、エレボス団長は僕の肩に手を置いてゆっくりとシャングリラに近寄っていった。


「お前が何故そんなことを言い出したのかは知らん。あまり興味もないし、過去のことを蒸し返すのは私が好きじゃないからな」

「…………エリュシオン」

「その名前も、もう捨てた」


 少しだけ迷うような素振りを見せてから、エレボス団長はシャングリラに掌を向けた。一体、何をするつもりなんだろうか。


「私はこれで過去にケリをつける。さらばだ」


 宣言と同時に、僕の手の中にあった天叢雲剣が大きく震える。次の瞬間には、エレボス団長を中心に光が広がり始める中、僕は時間を停止させてエリー、椿、日菜を回収して皇居から一気に離れた。


「きゃぁっ!?」

「な、なに?」


 急に景色が変わったことに全員が驚いている中、轟音と閃光によって裏世界の皇居が削り取られていく姿に僕は言葉が出なかった。

 エレボス団長は、自分の過去にケリをつけると言っていた。それが、暴走したシャングリラと共に死ぬことだったのだろうか。彼女にどんな過去があって、どういう考えの元でそういう行動をとったのか、僕には想像でしか語ることができない。ただ、この戦いによってレボリューショニストは完全に崩壊し、青の騎士団も結成された理由がなくなったという事実だけが、残った。

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