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 それから5分経っても誰一人来ず。そのまま東雲さんは僕を軽音楽同好会に誘ったことを後悔して、退部させてくれないだろうか。なんて考えていたら…

「ヘイ彼女!!!軽音楽同好会に興味なーい!?」

 東雲さんは遂に部長パワーを制御し切れなくなったのかな。

 東雲さんに話し掛けられた彼女は僕たち1年生と同じ色のリボンをつけて、ブレザーの代わりにベージュのカーディガンを着ている女子生徒だ。身長は低めで顔立ちも幼い。流石に東雲さんもそんな手段に出る人ではないと思いたい。

 彼女は眠そうな表情を浮かべながら東雲さんの方を向いた。

「けい…おんがく…?」

 少し目が覚めたような表情に変わった。

「そう!音楽!一緒にバンドを組んでさ!そして!」

 チャラいバンドマンの女子高生版かな?

 そして彼女は僕が持っているチラシに目を向ける。

「これ吹奏楽部って書いてな〜い?」

 再び眠そうな、もしくは怪訝そうとも思える表情に変わる。申し訳ないという気持ちにしかならない。

「ほら!吹奏楽部って楽器を演奏するじゃん!更に軽音楽!同好会!気軽に始められるよっ!」

 全国の吹奏楽部員に謝るべきだと思うよ。

「おんがく…。とりあえず、チラシだけ貰っていくね〜。」

 と、彼女は僕が持っているチラシを、コンビニに置いてあるパンフレットかの如くスルッと受け取った。

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つくりかけのスコア みと @mitoo_310_kr

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