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唯一力が入っている右腕を胸くらいの高さに上げてチラシを持っている。しかし、左腕は重力に引かれるまま、顔も表情筋に力が入らず無表情。もちろん、顔の一部である口も開かず声も出ない。
東雲さんは相変わらず同好会への勧誘の為に声を張っているけど、チラシを持っていない彼女のもとへ人は来るはずも…
「ちょっと話だけでも聞いていいかな?」
「もちろん!」
あるんかーい。
「ありがとー!もし興味があったら空き教室まで気軽にお越しあれ!」
東雲さんの声には不思議な力でも宿っているのだろうか。そう思っていたら、とある案が思い付いた。早速、彼女に提案することにした。
「あのー。さっきから東雲さんのとこには人が集まってきてるよね?」
「まぁ部長パワーってやつかな!」
その初めて聞くワードに意味づけるべく。
「更に部長パワーを発揮するアイテムがあるんだけど。」
「なになにっ!?」
「東雲さんが部長パワーを発揮します。」
「それでっ!?」
「人が集まってきます。」
「それでっ!?」
「東雲さんの横に僕が立ちます。」
「それでっ!?」
「興味を持ってくれた人に僕がチラシを渡します。」
「それでっ!?」
「その方が、勧誘するのには効率的じゃない?」
「…河西くん!!!天才なの!?」
…凡才の僕が持てた発想を認められた。一周回ってむしろ東雲さんの方が天才に見えてきた。
早速、東雲さんは部長パワーを発揮しつつ、僕は凡才とも何とも言い難い棒立ちの状態になる。
…が、10分経っても誰一人として来ず。見るからに僕の陰が東雲さんの陽を上回って、結果的にマイナスの数値になっているようにしか思えない状況だ。
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