耳にした歌
スマホに挿したイヤホンをつけて、趣味の音楽鑑賞(ただしアニソンに限る)に浸りながら、高校生活も良くも悪くも言えば無難に過ごせるんだろうなと考えながら、帰宅路になる予定になる道を歩いていた。
ふふふふーん♩ふーふふんふふっふー♩
聞こえてきたのは誰かの鼻声だ。少しばかり気になるけど、とっとと趣味に浸りながら帰ろう。
…と思ったけど、その歌声が気になって仕方ない。
なんだか、味わったことのない感覚を、僕の耳を貫通してくる。
それが気になるまま、僕はイヤホンをつけず、帰路に着くことにした。
その時。
「もしかして、私の歌を聞いてた?」
「ぬわぁっ!」
いきなり見知らぬ女子が話し掛けてきた。
「ごめんなさい。いきなりで、びっくりさせちゃったよね。」
「まぁ少しは…。その…なんとなく気になっただけで、特に深い理由はなくて、こちらこそ盗み聞きしたみたいで…。」
慣れない状況に困惑している僕を、彼女はまるで実験用の被検体かの如く凝視している。
「周りの音が気になって、それを聞いてみる…。もしかして、君は音楽制作者志望!」
音楽制作者…僕にはあまりにも遠い世界なんだけど…。
「まぁ、音楽を聴くのは好きですが…(ただしアニソンに限る)。」
彼女は何かを考え始めたような表情を浮かべた。けど、3秒と待たず、元のキラキラした表情に戻った。
「よし、仲間が出来た!」
「いや、いきなり何ですか!?」
「うーん、音楽好き同士の直感かな!」
「それなら、軽音楽部に入ってみたらどうですか!?僕なんかより、もっと音楽に詳しい人達がいると思いますよ!」
「でも、部活の入部が始まるまで、まだ何日かあるし。それにほら、高校生活なんて、あっと言う前に終わるって言うじゃん?」
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