変わらない僕

 入学式を終え、初めてのホームルームも担任の先生の自己紹介(数学担当らしい…うへぇ…)と、明日は生徒のそれがあるから考えておくようにとの指示があったくらいで、ほんの10分ほどで終わった。あっという間に初めての放課後だ。

 目立つことを避けて、中学時代を一言で表せば「無難」そのもので過ごした僕には「趣味は読書(ただし漫画とラノベに限る)と、音楽鑑賞(ただしアニソンに限る)」という明日しか見えない。

 家からそこまで遠くはない高校ということで、同じ中学だった人達も何人かいる。彼らの一部は一緒に下校するようだ。でも、特に仲が良い誰かがいる訳ではない僕は、ひっそりとソロ下校をするしかない。入る部活も帰宅部だという数週間後さえ見えてくる。

 

 ただ、これから少なくとも一年は、それ以上でもそれ以下でもないクラスメイトであるにも関わらず、どうしても気になる姿が目に入る。

 キラキラした表情で黒板、掲示物、窓の外といった、これから嫌でも何度も見るであろう物達を見ている女子生徒だ。

 入学早々、噂通り自由な校風なんだと感じさせられた。その自由の中で僕が選ぶのは、中学時代と変わらず「無難」でしかないんだけど。

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