第6話 表

 世界はざわめいていた


 人は空から、テレビから、スマホから目を離せなかった。


 一人の少女が化け物を鏖にする姿を。


 目を潰され、手を穿かれ、背を切られる姿を。


 血を飲み、肉を喰らい、それでも喰らいつく姿を。


 ある親子は泣き崩れた、娘が、姉が、ボロボロになっても抗う姿を。


 ある同級生は驚愕していた、絶望の中窮地に立たされながらも抗う姿を。


 ある掲示板では盛り上がっていた、幻想ファンタジーは存在していたと。彼女が誰なのかを特定しようと動き始めていた。


 だが


 歩こうとした少女が倒れた。


 血を流し過ぎたのだ。


 それでも、生きる為に這いずっていく。


 応援する声が聞こえた。光の柱はもうすこしだぞと、出口はすぐだぞと。


 少女が光の柱に辿り着くと光が増し少女の姿が消えた。


 少女が脱出したと誰もが思った。


 突如携帯が震えた、人々は通知を確認し驚愕した。


 『先駆者がチュートリアルをクリアしました。

それに伴い、ダンジョンにモンスターを配置します。

今回配置するモンスターはです。

先駆者が初めて倒したモンスターは随時ダンジョンに配置されます。

ダンジョンに配置されるモンスターは先駆者が戦ったモンスターより弱体化されています。

モンスターを倒すとたまにドロップ品を落とします。

モンスターによってドロップ品は違います。

ドロップ品は有効活用すれば多大な利益を得ることができます。


皆様の活躍を楽しみにしております。


追記、先駆者はモンスターを倒してもドロップ品はすべて皆様のところに還元されます。』


 テレビから、携帯から緊急速報が入ってきた。


 その内容は、ドームに化け物が出現した。だがその化け物は少女が戦った化け物とは少し違った


 持っているものが違う、棍棒や剣は持っておらず素手もしくは木の棒を持っていると


 数が違う、少なくて1体、多くても2.3体しか出てこない。


 脅威が違う、確認した自衛隊員が襲われたが怪我は負わなかった、いや、負うほどでもなかった。勢いはあるが、力も体型も小学生男児程しかなく、直ぐに対処された。


 そして一番違うのがドロップ品、化け物いや、ゴブリンを倒すと直ぐに煙のように消えドロップ品を落とした。だが、そのドロップ品に問題があった。


 1枚のコイン


 金色に輝くコインを拾った隊員は直ぐに上に提出、鑑定に出された。


 鑑定の結果、純金のコインだった。


 少女を襲ったゴブリンよりも弱く誰でも対処は可能、しかもドロップ品を落とす、それは確実に金になる。


 誰もが同じことを考えていた。


 だが、件の少女は消えてしまった。それだとモンスターは増えないじゃないか。金になるなら、ゴブリン以外のドロップ品がなにか知りたい。


 誰もが同じ事を考えていた。


 だが、また映像が映し出された。そこに写っていたのは朱く染まった琥珀の中に眠る先駆者の少女の姿カネノナルキを。


 誰もが笑みを浮かべていた


 

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(仮)一人の少女を犠牲にして現代は成り立っている 神無月 @yamat10

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