第2話
「あ、てか今日転校生来るらしいよ」
思い出したように口にする羽癒。
「え、ほんとに?こんな時期に珍しいね」
「何か事情があるんじゃない?
ね、そんなことより!イケメンかなぁ」
きらきらと目を輝かせながら
彼女は遠回しに願望を口にした。
「ふは、羽癒ならすぐ
彼氏ぐらいできるでしょ」
そう、恋愛への憧れが強い彼女は
本人が気づいていないだけで
凄くモテている。
白い肌にスラットしている体型、
それに加えて花が咲くような笑顔。
こんな子を男達が見逃しておく訳が無い、
そう確信するほどに彼女は美少女だ。
だから、彼氏を作ろうと思えば
簡単に出来てしまうだろう。
「そんなことないって。
それに佳奈だってモテモテなんだよ?」
意味がわからない言葉が耳を過ぎる。
私がモテている?そんな訳ない。
こんな地味っ子のどこを好きになるのよ。
訂正をしようとした時、
教室の扉が勢いよく開いた。
「おはよう!今日は転校生が来てるから
みんな席に戻れー」
担任の大きな声が教室中に響く。
「え、転校生どんな子なのー?」
「先生教えてよー」
先生の呼び掛けなんか聞いてないかのように
みんなは転校生の話題に夢中になった。
私と羽癒は大人しく自分の席に座り、
先生の方に視線を向けた。
「今から本人来るから、早く座れー」
少し怒りと焦りを含んだ声に変わった。
それを察したクラスメイトは
「はーい」
と口を揃えて告げて、それぞれ席に座った。
担任がキレたら怖いことを
知っているからこその行動である。
「それじゃあ、早速入ってきてもらうか
そんな軽い言葉が発せられると共に、
再び扉が開いた。
こつこつ、と靴の音だけが鳴り響く中、
みんなは息を呑んだ。
入ってきた彼が
あまりにも美しかったからだ。
そこら辺の女子よりもずっと綺麗で
男女問わずみんなが目を惹かれる。
彼の容姿はそれほどに綺麗だった。
「中瀬
みんなが目を輝かせ、
黄色い悲鳴を奏でる中
彼が発したのはそれだけだった。
私の中で彼の印象が少し悪くなった。
もう少し自分の紹介ぐらいして欲しい。
容姿がいいだけでそんなに偉いのか、
なんて一人静かに脳内で意見していた。
「んで、先生。俺の席どこですか」
「あ、あぁ。
空いてる席ならどこでもいいぞ」
「わかりました」
担任のあまりにも適当な言葉に
思わずため息を吐きかけた。
運悪く私の隣は空いている。
ということは彼が来る可能性がある。
頭の中が悪いことばかりになっていったので
”きっと彼はここには来ないだろう”
そう信じることで
心を落ち着かせることにした。
「あ、中瀬くん!私の隣空いてるよ!」
「俺の隣も空いてるぞ!」
耳を済ませなくとも聞こえてくる声が
頭に響く。
これと同時に少しずつ此方に向かってくる
足音も聞こえてくる。
なんとなく羽癒のものだろうと予測し
私は顔をそちらに向けた。
すると、目の前には
先程苦手になったばかりの人物が
隣の席に手をかけていた。
君と化学反応 遥瀬 唯 @haruyui_0604
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