第15話

「あー、ダメだ。もう訳が分からんよ」


「なんだぁ、今度は?」


「ああ、アキとユウジが襲撃を受けたろ、あの報告」


「やっぱアキの報告書じゃダメだったんすか?」


「そりゃそうだろ、バーン! とか ズキューン! とか書いてんだからダメだろ。んで書き直してみたんだけど、ほら、どうしても書かなきゃいけなくなるじゃん、『アブソス』とかファンドリールとかさ」


「いや、襲撃事件だけの事なんだろ? んじゃあそこだけに絞ればいいじゃねえか」


「おまっ、お前、簡単に言うけどなあ。長剣『ギリメカラ』だって、聖剣『レプラホーン』だってそんなに詳しく書けないだろ、そこを俺の技量でこう、うまくぼやからしてだな、あれ? ぼやらかして? ん? ぼやからして? どっち?」


「知らねえよ。まあ、アキの事も『ギリメカラ』の事も書けねえからなあ」


「ああ。アキの『黒棘』もユウジの『ギリメカラ』も表には出せない情報だからなあ、ほんと書けないよ。ま、お前の『オーシャン・スチール』もだけどな」


「ふんっ。ま、そりゃあ俺たちイレイサーの宿命みたいなもんだからな。それを言うならあんたのもだろ、ツノダさん」


「俺のはまあいいよ、別に。んでもまあなんとか片付きそうだしな」


「あ、そう言えばさ、トーコの剣ってあれ、もしかして刀ってやつか? いつも変わった格好してるし、剣もおかしな形してんなあって思ってたけど、そっか、あれが刀なのか」


「ん? ああ、トーコのは氷刃『ロッカ』って刀らしいぞ」


「ふーん」


「また、お前。ふーんってそんな興味なさそうに、お前なあ」


「はいはい。聞いても仕方ねえだろ? みんないろいろあんだよ」


「ま、まあ、そうかもしんない。あ、そう言えばニッタは?」


「ああ、なんか知らないけど騒ぎながら出てったすよ」


「まあたなんか噂話か? ほんとあいつはどこでいろんな話を見つけてくるんだろうなあ」


「ああ、そう言えばミヤモトミヤの新作がどうとか言ってて、そりゃ新作なら本屋行くより本人とこだろって言ったけど、あれか行っちゃったか、ミヤモトミヤんとこ」


「なっ?! なんでそういう事になるんだよ。まただ、また怒られる予感がする」


「なんで?」


「こないだの事件でミヤモトミヤさんの処遇がまだ決まってないだろ? 国家情報保安局からむやみに近づくなって通達が来てるんだよ、どうすんだよ、ハルキ」


「聞いてねえよ。ま、そのうち戻って来るんじゃねえか?」


「あれだろ、どうせ来るんだろ? ミヤモトミヤさん」


「ん?」


「連れてくるだろ、きっと」


「ああ。まあそうなるだろうなあ」


「あー、だめだ。もうほんとダメだ。あ、そうか。こないだの事件、本人に聞き取りするために呼んだんですって言ったらなんとかなるか? いや、ならないわあ」


 プロデューサー、ツノダの苦悩は続く。



 ※イレイサー:File05~07_帝都の聖蹟:指令があれば「憑きモノ」を「ないモノ」に消します。

 https://kakuyomu.jp/works/16817330651284346461




 次回更新

 2023/02/20 02:00

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