File06_ルスコの聖石
第16話
なぜあの依頼に例のイレイサーを選んでしまったのか、今も後悔しています、プロデューサーのツノダです。
あれは、とあるイレイサーの持ってきた一冊の本、そうです、あの本を書いた作家の依頼から始まりました。
その作家は、新進気鋭の売れっ子作家で、祖父が帝都大学の考古学教授、そこで古代帝国の遺跡・遺物の調査研究を行っていたのだそうです。
作家自身も祖父と同じく帝都大学で考古学を学び、それを基に書いた本が爆売れして、今や押しも押されぬ人気作家になったそうです。
その作家先生から、ルスコの自宅にある聖石に憑いた者のイレイスを依頼されました。
この依頼、国家情報保安局経由ではなくヨシダ局長からの直接依頼でしたので疑問に思い尋ねましたら、ヨシダさん、実は彼女のファンで、出版パーティーで出会って頼まれたらしくて、って、なんなんです? そういうの聞いてないですよ、私。
これはチャンスだと思いましてね、いや、いつもヨシダさんには叱られてるじゃないですか、これは公私混同を諫めるチャンスです。
こんな機会はそうそうありません。
思いっきり言ってやりましたよ。そしたら、そしたらですよ、ヨシダさん逆ギレですよ。
あ、話がそれてしまいました。
ともあれ正規の依頼でもありませんし、折しもイレイサー襲撃もあって例のイレイサーたちを近づけたくなかったわけですよ。
まあ、優秀な私ですから、ここはね、ほら、うまくいかなくてもあいつらのせいにできるし、うまくいったら私も作家先生と仲良くなってサイン本なんかもらえたりしちゃうと娘にパパすごい! とか言われちゃうかもしれないじゃないですか。
あ、もうほんとすみません、話が。
と、いう訳で例のイレイサーをルスコに派遣したわけです。
そしたら最初から戦闘ですよ。なんで聖石の調査に行ったら戦闘になるんでしょうか。
彼からの報告では作家先生の自宅に行くとすでに石の魔獣がわんさかいて家から溢れそうだったって書いてるんですけどね、そんなわけないじゃないですか。
彼に信じられないって言ったらお前も教会の司祭みたいにしてやろうか、と脅されてしまいました。
あ、そう言えば帝都の司祭、行方不明らしいんですよ。あの日本当に何があったのかは言えないらしいんですけどね。
聞いちゃってるんですよお、私。
いけない、今はルスコの聖石についての報告でした。
ほんと、もう、誰かに喋りたくて仕方ないのに、これもヨシダさんが喋っちゃダメって言うもんですから、おいおいここに書いていこうと思うんです。
例のイレイサーたちの苦情と共にね。
次回更新
2023/02/21 02:00
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