第123話大会四回戦5



 拍手と歓声が入り混じった爆音が会場を包む。

 会場から惜しみない拍手が送られる中、俺は信じられないと言った表情を浮かべコチラを凝視する選手の様子を伺っていた。

 第一回戦でこの大会の選手の質に幻滅したが、このレベルの選手が大勢いるのであれば戦闘狂バトルジャンキーの師匠や、そのケのある中原さんも満足できるだろう。


 まぁプロチームに所属している師匠は出場できないんだけどね。



「今年も負けた……しかも今年は探索者歴一か月なんて……本当に僕は才能がない。高校生活を賭けて探索者に打ち込んだけれど、結局ただの一度も優勝できなかった」



 呆然自失と言った様子でそう呟く、男子高校生の姿は哀れに見える。

 勝てると思っていた相手に負けたことが、余程悔しかったのだろうか? 舐めてかからなければよかったと思ているのか? はたまたもっと努力すればよかったと後悔しているのか? 


 まぁなんにせよ新見選手の心中は察するに余りある。

 もしかしたら負けていたのは、俺かもしれないんだから……



『解説の坂多さん。加藤選手の勝因はズバリなんでしょうか?』


『そうですね。あの強力な超短文詠唱で金色の発光をする付与魔法と、高い『ステータス』の成せる技だと思います。両選手共にセミプロレベルの探索者です。

敗れた新見選手もまだ高校三年生です。コレからもっと伸びると思います、今後の活躍に期待大です。』



 ――――と解説の坂多さんがフォローを入れる。

 恐らく、つい先ほど戦い。舞台袖で見た田中選手のように、番組が事前に“優勝候補”と考えていた選手なんだろう……



『なるほど……両選手共にセミプロレベルと言う、四回戦とは思えない程、手に汗握る熱い戦いに思わず私も篤くなってしまいました』


『私はやはり加藤選手の、相手の挙動や行動から相手の能力を推察し、詳らかにする考察力も彼の強力な武器だと思います。

恐らくプロの探索者の指導を受けているのではないでしょうか。

一般人が人に向けて、躊躇なく刃物を振るえるっていうのは……才能だと思いますよ』



 ――――と一瞬直し黙るような間が空くと、言葉を選ぶようにそう紡いだ。


 この試合結果をまるでフォローするかのように、何度も言葉を重ねるのは、彼もまた二年半の探索歴を持つ、優勝候補の選手だったためなのだろう。 


 俺がソレ(番組側が考えていた優勝候補)を何回も番狂わせジャイアントキリングしてしまった為、番組編集上、俺をプロレスの悪役ヒールっぽく仕立て上げるための下準備と言ったところだろうか?




 ――――などと考えていると、係りの人が退出ゲートに誘導してくれる……新見選手は回復魔法の使い手と思われる女性が付き添っている。

つい先ほど新見選手に寄り添っていた女性と同じ人だ。



「あらあらまぁまぁ、少し触るわね……筋肉が痛んでいるようね」



 などと優し気に声を掛けて魔法を掛けている。緑色の光が手から放たれ新見選手の患部が光に包まれている。



「ありがとうございます。今年も勝てませんでした……探索者歴一か月程度の探索者に負けちゃいました。彼絶対レベル2の後半ですよ……」


(ドンピシャで当たっている。レベル1の時の限界突破分リミットオーバーの『ステータス』がなければ勝利出来なかっただろう……)


「まぁまぁ、田中くんにも言ったけど……今回は負けちゃったけど冬があるでしょ? 今回は前回の夏大会で優勝者の近藤君が大学生の部に移ったから今年こそは! って私も思ってたんだけどね……田中くんが負けるのは仕方がないけど、まさか新見君まで降す実力があるなんて私も予想外よ……」


(あーなるほどね。二年生の田中選手と同じく、ルックスが良く探索者歴も長い新見選手は、番組が仕組んだ優勝候補だったと言う訳か……それも内部で新見選手は優勝候補としてかなり有力だった訳だ……二回も俺がこのヤラセ? 演出の被害に合っているのは恐らくは、《スキル》【禍転じて福と為す】のせいだろう……やっぱり俺が戦う相手は強者でハードモードなんだな……)


 とほほ……


 多文次も番組とグルになっている探索者か、前回大会で結果を残した相手と戦う事になるんだろうな。と少し憂鬱な気分になる。



「すいません。俺も治療してもらってもいいですか?」



 《スキル》【集中コンセイトレイト】の複数同時使用や無理やり発動させる事で、心身にかかる負担は莫大なものになる。

 そのため、急速な進路変更『V』ターンで破壊寸前の足首が熱を持っておりパンパンに膨らんでいる。



「少し待っててね。新見くんが終わったら行くから、痛むならアイシングでもしてて」


 そういうと冷却スプレーを投げ渡してくる。

 俺はソレを両手で受け取ると、特に痛む右足首に冷却スプレーをかける。

 普段のダンジョン探索で怪我をしたときには、後に響く怪我でもなければ冷却スプレー等で、患部を冷やしたりして対応している。


「はい。お待たせ……痛い所はどこ?」


「右足首と、両腕、あとは太腿ですね……」


「四肢全部じゃない……あの金色に光り輝いた《魔法》の後遺症……デメリットかしら?」


 そういいながら首を傾げた女性は、結構かわいらしい。


「じゃぁ、《魔法》かけるわ。怪我は治癒するけど体力を持っていかれるから、シッカリと栄養価のあるご飯を食べて夜更かしせずに寝てね……まぁこれだけ激戦を繰り広げたんだもの泥のように寝落ちできるでしょうけど……はい。終わったわ。控室で自前の回復薬ポーションンでものんでなさい」




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【あとがき】


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