第44-45話デート1-2

 何の因果か、俺はクラスメイトで最近通い始めた武器屋の看板娘、藍沢あいざわ鈴鹿すずかとお出かけする事になった!


 彼女曰く「懸賞で映画のチケットが当たった」らしい。

「友達にも声を掛けたようだが全滅」だったらしく折角だから誘ったの事だ。 副音声で「べ、別に(ry」って聴こえそうでw


 俺は早速装備を整える事にした。

そう!最早これは戦闘なのだ!


 デートの数日前……つまりは7月26日に俺は、手ごろな価格でなお且つ最新の流行を取り入れた洋服を求めて、ユニシロやCU、じばむらと言ったファストファッションの店舗を訪れ、マネキンが来ていた洋服を一式で何着か購入した。

 幸い武器を新調出来る程ではないが、金は稼げている。


 天の道を行き全てを司る男のおばあちゃん……ではなく、好きな作品のキャラクターと妹が言っていた。

 妹曰く「コータロー、洋服屋のマネキンってのはね。お洒落に詳しい人が一定の予算の範囲内で一式を決めてるの! だからコータローみたいな情報弱者の初心者は、ゲーム見たいに実況者とか攻略サイトがお勧めしてるテンプレ最強装備着てればいいの!」

 俺はこの言葉に心底なるほどと感心した。


 雰囲気的に美容院に行く勇気はなかったので、床屋で少しお洒落に髪をすいてもらい、ヘアワックスでさり気ない程度に規則性を持たせて毛先を遊ばせ、印象に残るような派手さよりも爽やかさを重視した服に身を包み、近所のドラックストアで購入したラベンダーの香りのボディコロンを手首と首筋に付ける。


 うん、仄かに香る程度でいい香りだ。


「約束の時間まで、まだ20分以上もある。余裕だな……」


 香水って聞くと、妖怪の次に世の中の全責任を背負わされたイメージが匂いだけに纏わり付く(ちょっと巧い事言った感)その次はアベガーだろうか? まあ個人的には、マリリン・モンローの「寝る時はシャネルの五番を着る」と言うセリフが想起させる。

 

 待ち合わせ場所は、駅前にある雑居ビルの一階のテナント、セイレーンコーヒーと言う米国初の世界的なコーヒーチェーンだ。

 コーヒーチェーンと言いながら、マキアートだのフラペチーノだの普通のコーヒーが)ry

 ロータリーからも地下駐輪場からも、徒歩5分以内とアクセスが良くオマケにダンジョンの反対側にあるので、人が過剰なほどは多くないのだ。


 地下道から外界へと続く階段を昇ると、転落防止柵の隙間からセイレーンコーヒーが見える。


 華やかな髪型と髪色に、ギャルっぽくそれでいてセンスが良いのか、不思議とけばけばしい印象派を与えない私服を着た。目立つ容姿の女の子がスマホをポチポチしながら、コンクリートの壁に背中を預けている。


「黙っていればホントに美人だなぁ~~」


 彼女と関わり始めて約一週間、LIMEチャットや通話、流行のゲームをする中で、俺は藍沢さんに対して何だか同性の友達と一緒にいるような気安さを感じてしまっていたのだが、今日その認識は素手で車のフロントガラスを叩き割るかの如く、物の見事に叩き壊された。


 ふとスマホに向いていた視線がクイと持ち上がり、何かを探すようにキョロキョロとあたりを見回す。

 彼女の視線が階段を昇降している、俺を捉えるのは時間の問題だった。


 「あっ!」と短く声を上げ、脇目も振らずパタパタと右手を大きく振って駆け寄って来る。


「コータロー! おはよう!」


 周囲の人達の「あの美少女のツレ、何か微妙じゃない?」とでも言いたげな矢の如き視線を浴びながら、俺は張り付けたような笑みを浮かべて小さく、小脇で手を振り返す。


「手の振り方が何だかぎこちないよ? もしかして筋でも痛めた?」


 そう言って心配してくれる。

 俺は少し挙動不審になりながらも、否定の言葉を口にする。


「そうなんだ。ならよかった! じゃぁ行こうか映画館」


 映画館まではシャトルバスが出ているのでそれに乗る事にした。

藍沢さんは茶髪に近い自然な金髪を、窓から入り込む外気に遊ばせている。

 時期のせいか、はたまた時間のせいか……バス内は非常に混雑しており、座席は全て埋まっている状態だ。


「こんなことになるんだったら、セットした髪が崩れる事とか気にせずにバイクに乗せて貰えば良かった……」


 今までゲームや通話をしていても、あまり愚痴を言わなかった藍沢さんもこの暑さは堪えるようだ。

 確かに夏のじめじめとした暑さに加え、エアコンが回っているとは言えこれだけ人が密集していれば、蒸し暑く汗もかく……


「あれもしかして知らない? バイクの二人乗りって免許取得から1年たたないと出来ないんだよ」


「え! そうなんだ初めて知った……」


 本当に知らなかったのだろう。

藍沢さんが口をあんぐりと開いて驚きを露わにする。


「だから高校2年になるまでは、二人乗りは出来ないんだよ……」


 俺は申し訳ないと言う気持ちで2人乗りが出来ないと答えた。


「残念だなぁ~憧れの二人乗りがぁ~まぁ来年乗せて貰えればいいか……」


 来年もこうして遊んでくれると捉えられる宣言に俺の心は踊る。


「まぁ二人乗りより自分で運転できる方が楽しいと思うけど、田舎で車を運転できないとかキツイし、どうせ免許とるなら普通二輪免許とってみたら? 原付免許簡単だけど取っても意味殆どないし……」


「……確かにゲームだって人のプレイを見ているよりも自分でやった方が楽しいものね……お金貯めて取ってみようかな」


 こうして映画館、ゲームセンター、スーパー銭湯、ホテルが入った巨大商業施設に到着し、お目当ての映画を見る事になった。


「映画のタイトル聞いてなかったけど……何を見るつもりなんだ?」


「インディコ・ジェーンと命運のダイヤルって言う、長編シリーズの最新作だったかな? 私はクリスタルスカルぐらいしか見た事ないんだけどね」


 そう言ってカラカラと笑う。


「インディコ・ジェーンかぁー、俺は結構好きかな……」


 そんなこんなでワイワイと談笑しながら、飲みものなどを買いスクリーンに向かった。


「映画面白かったね!」



 藍沢さんは大きな瞳をキラキラと輝かせ、映画の感想を熱く語る。

 それに対して、俺は共感と相槌でマシンガントークの弾雨を凌ぐ……



「ああそうだね。特に格闘戦のシーン……」


「そう! そうなんだよ! 何でもアクションシーンのスタントさんが全員探索者らしいんだよ!」



 インディコ・ジェーンの脚本書いた奴出て来いよ! 

崩壊しかけの古代遺跡の中で、空手ベースの肉弾戦で岩を砕いたりして、もうめちゃくちゃだった。

 だが探索者がアクションシーンをしていると言うのなら、納得できなくもない。

 

 米海軍の戦闘機パイロット育成する映画トッ〇ガンのように、冒険者を映像作品に利用する事で、目に見える形で自国の戦力をアピールし、自国の探索者の数を増やしたいと言う、合衆国政府の意図が見え隠れする。


 そんな事を考えながら俺達は劇場を後にした。


………

……


 一組の若い男女が長いエスカレーターを下っている。

 少女の方はギャルと言った見た目で、カジュアルな私服に身を包んでいる。

 男の方はと言うと、着慣れてないファストファッションに身を包み、如何にも整えて来たばかりの頭髪の毛先を遊ばせ、両者共に気合が入っていると百戦錬磨の恋愛強者達には分かるような風体だった。

それに対して周囲のカップルは、生暖かい目線を向けている。


 映画館の一階にある、ゲームセンターに足を運んでいた。

射幸心を煽るようなBGMやSEが鳴り響く、古き良き五月蠅いタイプのゲーセンではなくライトなゲーセンだった。



「映画の半券で1プレイ無料か、コイン10枚って結構ありがたいよね……」


「そうだね。鈴鹿スズカさんは良くゲーセンに来るの? 駅前だと地下とアーケードの方にゲーセンあったよね?」


「友達と行く時しか行かないかな……」



 友人が多い。とは言えない二人は押し黙ってしまう。



「何やろうかな? 時間を潰すなら王道のメダルゲームだけど……」


「コータローならクレーンゲームって言うかと思ってたけど苦手なの?」


「あんまり得意じゃないかな……」


「へーそうなんだ。大体3000円ぐらいでアームが強くなるイメージだけど巧い人は直ぐとるからなぁ……」



 時計を見るともうそろそろシャトルバスの時間だった。



「あ、折角だしあのでっかいクマの縫いぐるみがほしいな」



 彼女が指さしたのは、どうやって持って帰る? と言いたくなるような超特大の縫いぐるみだった。



「あれ取るの?」


「ダメで元々だよ? 欲張ったっていいじゃない」


「確かにそうだけど……」



 店員さんにたのんで半券二枚で遊ぶ事を伝る。

 一回目はアームの強さと癖を把握するためにプレイする。

 これならいけるな

 二回目で展示品にアームを当てて、雪崩を起こして縫いぐるみを2個手に入れた。



「この子は、大事にするね。」



その笑顔は眩しかった。

店員さんに袋を貰ってぬいぐるみを入れる。



「お腹空いたねどこ行こうか……」


「じゃぁあそこ行きたいな……」



 彼女がスマホで表示したお店は、学生御用達のファミレスだった。



「……てかこのお店でよかったの?」



 ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』、『プリマヴェーラ』、ラファエロの『システィーナの聖母』、フラ・アンジェリコの『受胎告知』など名画の数々が壁や天井に展示された聖堂風の店内に俺達は居る。

 YouT〇beの2,5chまとめで見た。外国人にはサ〇ゼは高級レストランに見えると言う話を思い出した。



「え、なんで? サ〇ゼ美味しいでしょ?」


「そうだけど……」



 俺の中でのデートのイメージは、少し高いお店に週末だから、デートだから、記念日だからと何か理由を付け、少し背伸びしてでも一緒の時間を分かち合うというものだ。



「あ、もしかして女の子と出かける時はお洒落なお店に連れて行かないとダメ! とか思ってた? だれでもそうだと思うけど“楽しい”って言う気持ちは、どこで過ごすか? も大事だけど……一番大切なのは誰と一緒に過ごすのか? だと私は思うな……」



 彼女は慌てて付け足すように早口でこう言った。



「それにと一緒に行くご飯なんてファミレスで十分だよ? それに私達はまだ、彼氏彼女でもないんだからさ……」



 早口でなおかつ段々と小さくなって行く声のせいで聞き取れたのは、「ファミレスで十分だよ?」の部分までだ。



「ごめん聞こえなかったもう一度言ってくれないか?」


「何でもない。ドリア美味しいよねって言ったの!」



 二人ともサラダなんて腹に溜まらないものは食べず。ドリアやパスタと言った食いでのあるものを食べている。



「そうだね……」



 そんな事を言いながら、匙でドリアを掬うと口に頬張る。

 ホワイトソースとミートソース、チーズの味が複雑に絡まった。

 深い味わいが舌を覆い尽くす。

 個人的には、俺ガイルで材木座がやっていたフォッカチオにガムシロップを付けると言う甘味をやりたいのだが、仮にも女の子を連れている今、そんな意地汚い真似をする勇気は無かった。



「今日はありがとう。私の我儘に付き合って貰っちゃって……」


「そんな事無いよ。良い息抜きにもなったしこっちこそ誘ってくれてありがとう」



 夕日を背にして少し照れくさそうに鈴鹿さんは微笑んだ。夕日のせいで頬が赤らんでいる様に見えたのか? 本当に頬が赤らんでいたのは、俺には解らなかったけど、照れていて貰えていると嬉しいなと思った。



============


【あとがき】


 まずは読んでくださり誠にありがとうございます!


 皆様のご愛顧応援のおかげで一日あたり、平均約1万のPVに到達しました。

 よろしければレビュー文を頂きたいな〜と思う今日この頃。

 ストックは5月までありますがあんまり伸びなければ打ち切ることもそろそろ視野に入れておこうかなと、(構想では7月の初週で第二章完結。反応次第で打ち切るか判断って予定だったんですけど1m行かなすぎて辛い)思ってます。

 まぁ現在95話までストックあるので、第二章までは更新し続ける予定ですので、安心してください(笑)


 ヱヴァのタイトルネタをやりたくて、約1万4千文字の作品を分割しました。焼肉回と同じくクレームが来そうですが(笑)


 中古3万で勝った楽天の業者のノートPCのファンが爆音になってきたので、PCを買い替えようかと思っています。それで約13万のガジェット系YouTuberのコラボPC買いました。

 昨年の11月から投稿を開始したため、初期の頃は暗黙の了解が分からずご迷惑をおかけしたこともありましたが、何とか数万足がでますがPCが買えるかな? と言うところまで稼げました。詳しくは四月のリワード見て見ないと分かんないですけど、目に見える成果の一つとして嬉しいです。


 あとセリフと地の文の改行を1行にするかに行にするかでも悩んでいます。ご意見有ればお気軽にお申し付けください。


 誤字脱字も多い事と思いますが、「コレ違うんじゃね?」と思ったりこっちの表現の方が良いと思う、などありましたらお気軽にコメントを下さい。更新中の作品のコメントは全て目を通しており返信もしておりますので、こういうストーリーがいいなどお気軽にお申し付け下さい。


読者の皆様に、大切なお願いがあります。

少しでも


「面白そう!」


「続きがきになる!」


「主人公・作者がんばってるな」


そう思っていただけましたら、

作品フォローと★星を入れていただけますと嬉しいです!

つまらなけば星一つ★、面白ければ星三つ★★★

読者の皆様が正直に、思った評価で結構です!


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またコメントを入れて頂けるともっと嬉しいです。

作者のモチベーションが上がって最高の応援となります!

どうぞ、よしくお願い致します。m(__)m


作者の旧作もお勧めです。順番は新しい順です


ハイファン「魔剣士学院の悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めました。美味いメシと刀を作って自由気ままに暮らしたい。邪魔する奴は刀でぶった斬る」

https://kakuyomu.jp/works/16817330649742962025/episodes/16817330649866158494


ハイファン「フリーター転生。貴族に転生したけど、父は長男だが冒険者をしていたので継承権が低い件。俺は精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で、剣と魔法を極め公爵へと成り上がる」

https://kakuyomu.jp/works/16817330647772947762/episodes/16817330647877332453


ハイファン「公爵家から追放されたハーフエルフの俺は、序盤のイベントで勇者を庇って死ぬモブに転生したので、死亡フラグを回避する為に槍と魔術で最強になりました。俺はハーレム王になって新天地で領主として楽しく暮らしたい」

https://kakuyomu.jp/works/16817139557348161268/episodes/16817139557348902055

 

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