ダンジョン攻略七日目1-7

第46話ダンジョン七日目1


 数日間の死闘や激闘のお陰で大分ステータスが伸びた。


――――――――――――――――――


加藤光太郎

Lv.1

 力:A → S

耐久:D → A

技巧:B → S

敏捷:C → A

魔力:E → C

幸運:I


《魔法》

皇武神の加護ディバイン・ブレス

・『南無八幡大菩薩』

・詠唱する事で金属に『鏖殺おうさつ』の特権を与える。

・『性質の強化』と、呪いカースに分類される頭を割るような激痛を相手に与える。


《スキル》 

【禍転じて福と為す】

・障碍を打ち破った場合、相応の報酬が与えられ、獲得する経験が上昇する。

・障碍が与えられる。また全てのモンスターの戦闘能力が上昇する。

・モンスターの落とすアイテムの質が良くなる。またステータス幸運を表示する。


――――――――――――――――――  



 二日前に立花銀雪たちばなしらゆきさんに、ボコボコにされたお陰で『耐久』と『技巧』のステータスが爆増している。《魔法》もダンジョンの中で使いまくっているお陰で、伸びが物凄くいい。

 これなら左側の奥に進んでも多分大丈夫だろう……でも保険が欲しいな……


 俺は駆け足で、カウンターに向かう。


 整理券を受け取り、手近なソファーに腰を降ろす。

館内放送と頭上や壁に掛けられた大型モニターを気に掛けながら、立花銀雪たちばなしらゆきさんに、「次に訓練の都合が付く日はいつですか?」とLIMEでメッセージを入力していると、ランプが点灯する。


 モニターに文字が表示され、単語、単語で切り貼りされた合成音声が、呼び出しする。


『615番で、お待ちの、お客様、カウンター、へどうぞ』


 発券された感熱紙に目を落とすと、印字された数字は呼び出しがった『615番』、館内にある地図や案内表示によると、二番の『買い取りカウンター』に行けという事らしい。

 頭上にある表示に従ってとぼとぼと歩いて行く……

 カウンターの上部には電光掲示板が存在しており、『615番』と表記された場所に行くといつものお姉さんがそこに居た。


「珍しいわね。今日はいつもに比べて早いじゃない……」


 どうやら早朝に潜って、帰って来たと思っているらしい。


「違うんです。どっちかって言うと寝坊しまして……」


 ここ数日の特訓と映画館デートでどっちもデートか?、精神も肉体も休まる事無く、気が付いたら寝過ごしてしまったボッチには休息が必要なのだ。


「先輩から聞いたわよ……昨日は一人でスタンピードを終息させたんですって? おまけにあの立花銀雪たちばなしらゆきさんに指導を受けたんですもの、一日二日で疲労が抜けなくても仕方がないわよ。まぁ若いんだから何事も経験よ」


 と言って、カラカラと笑っている。


 俺は目隠れ系男女や、田舎に転校したシスコン番長でも、ましてや屋根裏のゴミではないので、そんなハードスケジュールは御免こうむりたい。


 俺の呆れ顔を見てわざとらしく、ごほんと咳払いをすると俺の要件を聞いてきた。


「という事は、今日はダンジョンで得たアイテムの買戻しの話かしら……」


「そうなんです。なんだか数日前から嫌な感じがするんです。その保険で回復薬ポーションを買いたいなって思って……」


 お姉さんは逡巡したような表情を浮かべると、小さく手招きをした。

 どうたら、顔を防弾ガラスに近づけろと言う事らしい。

 お姉さんはマイクの胸元にある。ヘッドセットのスイッチを切ると小声で呟いた。


「他言無用でお願いしたいんだけど、今月に入ってからイレギュラーの報告件数が激増しているのよ……」


 俺は目を見開いた。


もしかして俺のせいか? だが今月なら俺のせいとは限らない。


 俺の《スキル》【禍転じて福と為す】は、全モンスターを強化し障碍と呼ばれる特別なモンスターを生み出す。その影響が他人に起きるかもしれない。と言う簡単な想像に至れなかった事を恥じる。


「だからキミ目当てで来たって言う立花たちばなさんも面倒な事はあるけど、JSUSA豊橋支部ウチとしては棚から牡丹餅って状況よ。 

 彼女に調査を依頼すれば、その分費用がかかるからね……職員としては本当はこんな事言っちゃいけないんだけど、暫くはダンジョンに潜らない方が良いと思うの……」


 彼女は親切心から、自分の職を危うくしてまで警告してくれているのに……俺は自分のせいかも?と言う、漠然とした疑問を解消するためだけに、ダンジョンに潜ろうとしている。


「ご忠告、ありがとうございます。なら俺行かないと……回復薬ポーションなんですけど買えるだけ全部買います。武器の買い取りで相殺できますか?」


 と確認を取る。


「確かにこのランクのポーションなら、相殺できるけど……いいの?」


 本当にそれでいいの? と言いたげな視線を向けてくる。

なにより一番大事な事は、命を守る事だ。

優れた武器ならもう持っているしな……


「結構ランクの高い武器が多かったみたいだけど……主兵装って刀だったわよね……」


「ええそうです」


「ならこの短剣持っていった方が良いと思うの! 前に解体用のナイフで戦う事もあるって言っていたから、もしもの武器として丁度いいと思うの」


 確かに邪魔にならない手頃な大きさで、良く斬れそうだ。


「等級はEランクだから、もの凄く高い訳じゃない点もお勧ポイントね」


 保険としてはありだな……


「ではそれも貰います」


 こうして俺は当てにしていた収入を殆ど消費し、手に入れた保険を持ちポーションダンジョンに潜る事にした。


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