お母さん

お母さん

ねえ、お母さん。

子どものようで、難しいことが出来ない。

そんなお母さんに、今まで言えなかったことがあるよ。

幼稚園のとき。

あの長い坂を毎日、私を乗せて自転車で登ってくれたよね。

小学生のとき。

私のために、給食のマットや机のカバー、手提げ袋を縫ってくれたよね。いろんな柄があって、毎日選ぶのが楽しかったことを覚えてる。

中学生のとき。

人付き合いも、両立も苦手なお母さんだけど、私が塾を始めたから、好きだったトールペイントを辞めて、パートの仕事を始めたんだよね。

高校生のとき。

お父さんも、私も、お姉ちゃんも、帰ってくる時間がばらばらになっちゃって。でもお母さんは、毎日、毎日。朝早くから、夜遅くまで。仕事と家のことを一人で頑張ってくれてた。

大学生のとき。

お母さんが毎日、お弁当を作ってくれたこと。そしてたまに、大学までの長い道のりを送り迎えしてくれたことを、覚えているよ。

そうして私は今、社会人になったよ。

ただ、思うのは。

その長い時間が、お母さんにとって、どれだけ大変だったのか。

その時間の密度が、お母さんにとって、どれだけ濃いものだったのか。

お母さんの髪の毛はもう、真っ白だ。

その髪を恥ずかしそうに笑って、いつも深く帽子を被るようになったお母さん。

ありがとう、お母さん。

これからは私が、お母さんを支える番だ。

こんなに近くにいるのに、ずっと言えなかったよ。

今まで、本当にありがとう。