Side サレナ

 先輩の騎士の威厳なんてサレナからすれば関係なかった。

 自分と兄との甘い時間を阻害された。それだけで戦う理由は彼女にとっては十分なこと。


(……ミリヤがデートしてるのみて、すっごく羨ましくなったから)


 昨日のデート現場を見たことがきっかけで自分の気持ちに素直になれたことを踏まえれば、皮肉な話ではあるが、サレナは嫉妬心を募らせていたのだ。

 だからこそ、今朝は内心、恥ずかしい想いをしながらも兄に甘えた時間を過ごすことにした。

 講義室では騎士たちだけでなく、シューラにも睨まれはしたが今日は私の日だから我慢している様だった。

 でも、手を出してきた、兄との時間を邪魔してきた騎士がいた。 

 それが今サレナと決闘をしている対戦相手である。

 騎士の中でもかなりの実力者であるらしいが、サレナには関係がない。

 そんなこと気にも留めていなかった。

 心なしか負ける気がしなかったのだ。瞳がうずいてから、なぜか力が漲ってくる。


 ありのまま力を開放すれば、やりすぎちゃうかも、といった懸念があったが兄との甘い時間を阻害されたから、そんな遠慮はない。

 サレナは思いのままに力を発揮していく。


(それに、もし圧勝できたらお兄ちゃんに褒めてもらえるかもだし)


 えらい、えらいと頭を撫でてくれるシチュエーションを思い浮かべるとサレナは思わず頬を蕩けさせた。

 その想像で、ますます勝ちたくなってくる。


「……な、なんなんだっ……この速さはっ」


 先輩は最初は驚いた表情を浮かべていたが、やがて口角を引きつかせる様になりガクガクと歯を震わせだした。騎士だというのに情けがない。

 それでも先輩なのか、サレナは問いただしたい気分だった。

 だが、それも仕方がないことだろう。

 今のサレナは魔眼の覚醒状態にあり、基本手出しが無用なほどの強さを誇っているのだから……。恋を自覚し素直になったサレナは無自覚ながら魔眼を制御できており、その強さを発揮している。

 正直言って、ほとんどの者が相手になるような器では、サレナはなかったのである。ギャラリーの眼は完全にサレナに釘付け。彼女の速さに多くの者が目を見開き固まっていた。


 兄に見られていると思うと、高揚感に気持ちが包まれていく。

 試合運びはほぼサレナの独壇場でやがて決着がつくと、サレナはVサインを兄に送る。


(……勝ったよ。お兄ちゃん。あとでいっぱい褒めてね?)


 兄は感動のあまり腰を震わせ苦笑を浮かべていた。

 まったく、今度はお兄ちゃんが素直じゃなくなったか。

 と、サレナは思わず口角を緩ませる。

 そこで……サレナは兄・リューライトの胸板に飛び込んだのだった。






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

あとがき


今回は、闘いのサレナ視点です。

 次回から目をつけられたリューライトの生活に戻ります!


 また本作と同じく転生系の新作もしておりますので、よろしければお願いいたします!


『悪友キャラに転生したので、ゲーム知識と努力でこの世界を思う存分満喫する』

https://kakuyomu.jp/works/16817330650161833457

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最凶悪役貴族に転生したけど、なぜか美人令嬢たちが次々と甘えてくる件について 脇岡こなつ(旧)ダブリューオーシー @djmghbvt

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