決闘です?

 実力の差は見るまでもなく歴然だった。

 絡んできた騎士の先輩とリューライトの妹であるサレナとの決闘。

 決闘の場は庭園で行われ、観客数はかなり多かった。

 恐らく新人がどんなものか、その実力を自分の眼で確認したかったのだろう。

 この場にいる多くの者がサレナの敗北と予想を立てていた。

 もっとも、リューライトとその取り巻きの彼女達はサレナが勝つと踏んでいたわけであるが……。


(……先輩、勝負はやめておいた方がいい気しかしないんですが……)


 緊張感あふれる決闘場でリューライトは冷や汗を流す。

 サレナの瞳は禍々しく輝いており、この状態の彼女にほぼ敵なしだと原作知識のあるリューライトは悟っていた。

 そんなリューライトの気持ちとは裏腹に先輩はリューライトへとにらみをきかした。


「……妹の次はお前だからな? 騎士団の栄誉をケガさせはせん。惚気はいらぬ」


 ……正論だし、その通り。

 いいぞ、もっといってやってくれ、とは思うもののサレナは先輩ににらみを利かしたままだ。あの状態は覚醒している。

 覚醒の理由は分からないが、ああなった彼女に手出しはなかなか難しいだろう。

 リューライトの予測通り決闘は進んでいく。

 ギャラリーは先輩を応援しているらしく『いいぞ~』と黄色い歓声を上げていた。

 そんな中、ルクスがリューライトの元へと駆け寄る。


「……リューライト様はサレナさんよりも強大な力を持たれていらっしゃるんですね」

「ま、まあ当然だ」


 嘘だが、こんなに煌めいた視線を受けては嘘だとは言えなかった。

 サレナが圧倒していく展開を見せ始めると、ルクスは『さすがです』となぜか賞賛の声をリューライトにあげてくる。


「……なっ。なんていう速さだ」

「……お兄ちゃんのためなら、私は負けない」

「バ、バカなっ……ありえん……。あの新人は貴様より実力が上だというのか……!」


 いや、そんなわけない。

 ヒロイン達は力がなぜか現段階で覚醒してるからチートなだけであってリューライトはそうではない。

 しかし、先輩のその発言でギャラリーの関心はリューライトに集まった。


(……あの新人、あの女の子より上なのかよ)

(王女様とモニカ団長がどうりで推すわけね……)

(見た目に反して化け物か……)


 やめてくれ。

 頼むからやめてくれ。

 リューライトの焦りは昂っていく。しかし、こんなに視線を浴びては『誤解ですっ

!』とは言えるはずもない。またそんなメンタルがあるはずもない。

 先輩を圧倒していくサレナを見て、リューライトは内心で泣きそうになっていた。


♦♢♦


(アイツは一体何者なんだ?)


 離れた場所で観察をしていた少女は目を丸くさせ、瞳を輝かせた。

 その少女は編入が今から楽しみだ、と邪悪な笑みをその場で浮かべてみせた。

 

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