風に導かれて

 病を克服した私は、高校も無事に卒業した。

 2年の留年を経て、ついに大学生となった。

 二十歳で大学1年生。

 なにもかもが新鮮だ。

 講義室にはたくさん人がいた。

 これが授業なんだー…。

 興奮を抑え、冷静になれと暗示する。

 食堂は活気に満ちていて、料理はとても美味しかった。

 母の作るご飯か病院食が当たり前だったから、味が濃く感じたけど美味しく食べられた。

 校内は広い。人も多い。

 いろんな人がいて、面白い。

 大学に通える幸せを噛み締める。

 ところで、彼は何処にいるのだろう。

 確か、中庭にいると言っていたような…。


「いたいた!」

「あっ!」


 ベンチに座っていた舟喜ふなき君を見付けた。

 私は駆け寄る。

 立った彼は、とても背が高かった。

 見上げる私。なんか変だなと思った。


「久しぶり」

「久しぶり舟喜君」


 約束、果たせた瞬間だった。

 その時、優しくそよ風が吹いた。


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【短編】そよ風はやすらぎ 奏流こころ @anmitu725

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