第166話 いざ古代都市ゼブルニアへ
足元に広がる古代魔法都市ゼブルニアは、煌々と輝いていた。
「おぉ~……」
ロザリオも思わずそう声を上げる。
長い長い洞窟を進んだ先に強い光輝く出口があった。抜けて行くと眼下に崩壊したまま放置された巨大都市があった。
そのいたるところに魔法陣が描かれていた。そしてその魔法陣が発する魔力の影響なのか様々な色に輝く半透明の鉱石———結晶化した魔石も点在していた。
それらが多彩な輝きを放ち、街を照らしていた。
———虹の遺跡都市。
一言で表すとその言葉がふさわしい光景だった。
「よし。さっそくグレイヴ・タルラントを捜索しよう。俺とアンとリタ。そしてロザリオとナミで二手に分かれて探索する」
「———ヹッ⁉」
ナミが聞いたことのない、とても奇妙な音を口から出した。「え」と「う」の中間の音に濁点を付けたような非常に文字にし辛いそんな音。
「何だ? 文句でもあるのか?」
「え、えぇ~……とぉ、あの、会長。パーティを分けるんですか? それも私の方が少ない人数の方で、しかも男の子と二人きり……」
「そうだ。何のために貴様らを連れてきたと思っている。未踏の古代都市で一人の人間を見つける為だろうが」
「それでも知らない男の子と二人きりは嫌……で、す……」
ナミの語気が弱くなっていき、ロザリオをチラチラと見る。
そして目を泳がせ、うつむき黙ってしまう。
自分の言葉がロザリオを傷付けたのではないかと後悔しているのだろう。一方で当のロザリオは全く気にしていないように笑顔で肩をすくめた。
「たわけ。男と言ってもロザリオだ。お前も何度か顔を合わせている全く知らない相手と言うわけでもあるまい。それに人員配置はこうするしかないのだ」
「えぇ……どうしてぇ……?」
「ナミ、お前は言うまでもなくこの中で一番強い。だから少ない人数の方に割り振るべきである。その上、グレイヴ・タルラントがいる場所の目星がある程度付けられる元『
「ぇえ~……でもぉ~……」
まだ駄々をこねる。
「黙れ。
問答無用で話を打ち切り、シッシッとナミを手で追い払う。
強引だが、人員配分はこの分け方がベスト、それ以外は危険が伴うのだから仕方がない。
このパーティに中で一番ネックなのはリタである。
俺に従うと言って魔族である証拠を見せつけてきたので、役に立つと連れてきたが、実際の腹の内はわからない。
裏切る可能性が大いにある。
そうなると止められるのは俺ぐらいしかいないだろうし、そうなるともしもグレイヴと鉢合わせたときに対処できる強さの配分となると、チートの肉体を持つ俺と剣聖ナミをそれぞれのパーティに配分しておく必要がある。
「それじゃあ行きましょうか、ナミ・オフィリアさん」
「うぅ……知らない人、怖い……」
「大丈夫ですよ。あなた以上に怖い人間なんていませんから」
「え?」
先行し、古代都市へと降りていくロザリオに引っぱられるようにナミも後に続いて降りていく。
ナミは知らない人……とはいうが、本当はロザリオとナミは主人公とヒロインの関係である。
ギャルゲーであるこの世界の恋愛対象キャラの一人であり、ロザリオと恋仲になってもおかしくはないのだが……まぁ、これを機にもしかしたらそういう関係性に転んでいくかもしれない。
「……行こう。ご主人様。ボスを探しに」
そして、ナミたちが向かった方向とは逆側をリタが指さしなだらかな坂を降りていく。
小さい体に纏ったローブをゆらゆらと揺らす軽やかな動きで。
「ああ———」
この探索で、リタがどう出るか……。
一応、それがわからないから彼女には武装をさせずに、手ぶらで同行させた。
本来の武器である大斧を持たせたら、状況次第では俺とナミがいても止められない。それだけのポテンシャルが彼女にはある。
前回、アリシア誘拐事件で軽くではあるが戦った俺はそれを痛感した。
彼女は———危険だ。
だが———確実にグレイヴを見つけるには彼女の情報に頼らざるを得ない。
魔族で元『
上手く情報を引き出すことができれば、直ぐにグレイヴ・タルラントを見つけることができるだろう。
そう考えながらリタの後に続き、その後をアンが何も言わずについてくる。
坂を下りた先には朽ちた廃墟が広がる、遺跡都市ゼブルニアが広がっていた。
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