兄弟

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今回はアーサー視点です。

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アーサーが王都に到着した。

歓迎の声は凄まじい。


ただ、王都に到着した人数は少ない。

元々、アーサーは少数で出発し、西部貴族や第2騎士団と合流し、大軍となった。

今は西部貴族は解散し、第2騎士団ともバレティアで別れた。


パエルモ卿とその騎士たちがいるため、これでも出発した時よりも少し増えている。


沿道を埋め尽くす人々の歓声に応え、手を振りながら進んでいく。

目指すは王宮。


ゆっくりと、堂々と進んでいく。

表情はにこやかにしているが気は重い。


王宮に到着する。

王宮に入るのは、

アーサーとその側近、

パエルモ卿を筆頭とする貴族数名、

ネルソン子爵のような王宮から派遣された貴族などである。


アーサーを先頭に進んでいく。


そして、謁見の間。

エドワルド国王陛下が出迎える。

アーサーたちは臣下の礼をとる。


エドワルド

「面を上げよ。

よくやってくれた。

我が国が大連合軍の総司令となり、魔王討伐を成した。

歴史的偉業である。

アーサー、

よくやってくれた。」


アーサー

「もったいない御言葉です。

リズムリア王国の威光を世界に示せたことを嬉しく思います。

陛下よりお預け頂いた力の賜物です。」


エドワルド

「そして、パエルモ卿、また従軍した各員にも感謝しかない。

非常に危険な役目と知りつつ参加してくれた。

十分な褒美をとらせよう。」


パエルモ

「有り難き御言葉。」


エドワルド

「国中の者がそなたらの武勇伝を聞きたがっておる。

今日はゆっくりと休み、明日開く祝勝会にて、聞かせてやって欲しい。」


アーサー

「少しよろしいでしょうか?」


エドワルド

「ん?

どうした、申してみよ。」


アーサー

「久しぶりに兄弟水入らずで酒を飲みたいのですが、お付き合い頂けませんか?」


エドワルド

「・・・いいだろう。

私もお前とはゆっくり話がしたいと思っていたところだ。

今日の夜、私の私室に参れ。

良い酒を用意しておこう。」


ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ


今の一連のやり取りを微笑ましい兄弟の会話と受け取った者がほとんどだった。


だが、一部の者は強烈な違和感を感じ取っていた。この兄弟は仲が良い訳ではない。

一部の演劇や美談として、模範的な兄弟関係のように語られることもあるが、現実は冷めた関係である。

それが何故、こんな会話をしているんだ?

そこから色々な推測をする者もいた。




その日の夜。

アーサーはエドワルドの私室を訪れた。

もちろんだが、護衛がいる。

そして、兄弟とは言え、許可がなければ入ることは出来ない。


『兄弟とは言え』という表現はある意味間違っている。『兄弟だからこそ』だ。

王位継承権を持つ者。

それは危険因子なのだ。

エドワルドを殺せば王位に就ける可能性のある存在なのだから。


衛兵

「アーサー殿下をお連れ致しました。」


エドワルド

「通せ。」


衛兵

「はっ。」


ドアが開き、中に入る。


アーサー

「陛下、お時間を作って頂き誠に有難うございます。」


エドワルド

「そう形式ばらなくても良い。

ここにはそれをとがめる人間はおらんのだからな。

さぁ、こっちに来て座れ。」


アーサー

「では、遠慮なく。」


アーサーはエドワルドの向かい側に座る。


小さなテーブルにはワインのボトルと、いくつかの皿が並んでいた。

皿の上にはチーズやサラミなどいくつかのおつまみになるような物がならんでいる。


エドワルドがワインを2つのグラスに注ぐ。


エドワルド

「飲もうか。」


アーサー

「いただきます。」


アーサーはグラスを受け取り、

2人とも少しグラスを持ち上げ、

そして口へ。

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