策謀の末路

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

今回はオチョロイ伯爵視点です。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


オチョロイ

「全軍、気を抜くなよ。

反逆者どもの敗残兵がパエルモを目指して逃げてくる可能性がある。

ここで止めるぞ。」


オチョロイ伯爵の計画はこうだ。

疲れきったアーサーたちを大軍で後方より襲撃。

ただ、アーサーたちの人数は多い。

奇襲攻撃で大打撃を与えても、すぐに全滅させることは難しい。おそらく行軍の前方にいた兵士たちには逃げられる。

そこで、逃げてきた兵士をバレティアに引き付けて、一網打尽にする。


オチョロイ

「前方には難攻不落のバレティア。

後方からは追撃。

袋のネズミだな。」


貴族

「これで国王陛下も安泰ですな。」


オチョロイ

「フフフ、その通り。

そして、忠臣である我々にはより、力を与えてくださるだろう。」


兵士が駆けてきた。


兵士

「申し上げます。

反逆者たちの先頭がバレティアに近付いて参りました。

なお、第2騎士団の姿は見えず、殿を務めているもようです。」


オチョロイ

「西部貴族たちが第2騎士団を見捨てて、先に逃げてきた訳か。

こちらの思うつぼだな。」


貴族

「第2騎士団を相手にするよりもやりやすいですね。」


オチョロイ

「やつらが近くまで来たら、門を閉めよ。

門が閉まり次第、

街壁の上から総攻撃だ。」


貴族

「暴利を貪っていた西部貴族が減れば、国全体が潤うでしょう。」


オチョロイ

「パエルモめ、

息子の教育を怠った罰だ。

死をもって償うのだな。」


西部貴族の兵士たちはボロボロだ。

怪我人も多く、進む速度も遅い。


オチョロイ

「想像以上に疲弊しているようだな。」


兵士が駆けてきた。


兵士

「申し上げます。

奇襲部隊の一部が迂回路より戻って参りました。」


貴族

「ん?

早いな。」


貴族

「第2騎士団もまともに戦える状態ではなかったのでしょう。」


オチョロイ

「城内で休ませてやれ。」


兵士

「はっ。」


兵士が下がる。


西部貴族の部隊が街の門に近付いてきた。


オチョロイ

「そろそろか。」


ドーン!

大きな爆発音が街門とは異なる方向から鳴った。


貴族

「何事だ!?」


貴族

「あれは通用門の方か!」


煙があがっている。


貴族

「あっ!

あれは!」


爆発音と煙に気を取られた瞬間、西部貴族の部隊から少数が飛び出し、一気に街門に迫った。


オチョロイ

「し、閉めろ!

早くするんだ!」


街門に向けて西部貴族の兵士たちが一斉に攻撃を開始した。


貴族

「こ、攻撃!?

バカな、、、」


兵士

「門が、、、

門が閉められません!」


更に兵士が駆けてきた。


兵士

「通用門より第2騎士団が入ってきました!

勢いが凄まじく止められません!」


オチョロイ

「何故だ!?

何故、そんなところに第2騎士団がいるんだ!」


報告に来た兵士に掴みかかる。


兵士

「わ、わかりません。」


オチョロイ

「くそっ!」


貴族

「大丈夫なのか?」


オチョロイ

「当然だ!

ここは難攻不落のバレティアだ。

私が前線に出る。」


貴族

「さすが、オチョロイ卿!」


オチョロイ

「ここで勝利の祝杯をあげる準備をしておいてくれ。

私が戻る前に始めないでくれよ。

ハハハ。」


貴族

「頼もしい限りだ。

私の秘蔵の酒を用意しておこう。」


貴族たちの前を悠然と歩くオチョロイ伯爵。


(バカめ。

この状況で勝てる訳がないだろう。

王都に戻って態勢を立て直さねば。)


オチョロイ伯爵は精鋭を集め、混乱に乗じて逃げ出すつもりだ。



あちらこちらで戦闘する音がなり響く。


くそっ!

どこで誤ったんだ?

こんなはずじゃなかった。


アーサー、パエルモ、セージ。

奴らを退場させれば、国王陛下の力は圧倒的に高まる。そうすれば、人事も自由自在に決められる。

今のように非協力的な貴族たちの顔色をうかがう必要もない。


そうなれば、

一番の功労者である私は宰相だ。


幼少期から、国王陛下に尽くしてきた。

今でも異例の出世だと言われている。

でも、

もう少し、

もう少しで、

臣下の最高位に手が届くのだ。

こんなところで諦められるか!

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