セージの罠

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今回はセージ視点です。

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騎士

「団長の予想通りに潜伏しておりました。

かなりの数です。」


セージ

「そうか。

報告ご苦労だったな。

引き続きバレないように偵察を続けてくれ。」


騎士

「承知しました。」


報告を終えた騎士が去っていく。


セージ

「ふ~、気が重いな。」


独り言が出てしまう。


アキラのおかげでバーバラ様の企てが明らかになった。

ただ、アキラの情報ではアルバンからバレティアの間のどこかで襲ってくるらしい、としかわからなかった。


しかし、セージはここら辺の地形に詳しい。

庭のようなものだ。

ドバン帝国から帰還する我々を襲撃するには相当の戦力を集める必要がある。

そして、人数が多くなればなるほど、潜伏出来る場所は限られてくる。


セージは2ヶ所に目星をつけ、偵察を走らせていた。

そして、ヒットしたのだ。


魔王軍との戦闘。

長旅。

負傷者も多い。

兵は疲弊している。


セージはアーサー殿下の元を訪れた。

そこにはパエルモ伯爵もいた。


アーサー

「やはり、いたか。」


セージ

「はい。

こちらに。

規模は・・・。」


セージは地図を示しながらアーサー殿下に状況を説明していく。


アーサー

「本当に第2騎士団だけで大丈夫なのか?」


セージ

「十分対応出来るでしょう。

今回は襲撃を撃退するだけではなく、その後の流れもございます。我々だけで動く方がやりやすいです。」


アーサー

「わかった。

任せよう。

パエルモ卿も問題ないか?」


パエルモ

「問題ございません。

我々は楽なものですよ。」


アーサー

「では、明日。

手筈通りに頼む。

何かあれば連絡してくれ。

状況に応じて対応してもらってかまわん。」


セージ・パエルモ

「「承知しました。」」




そして翌日。


バレたことに気付いていない奇襲は自滅行為だ。

優位だと思っていたのに相手が待ち構えていたショックも大きい。

それに作戦が根本から崩れているため、立て直すのにも時間がかかる。


セージ

「そろそろか。」


「「「おおぉぉぉ!!」」」


セージの予測通り、背後から鬨の声があがった。

こちらが混乱していると思い込み、背後から襲いかかる敵襲。

だが、

こちらは万全の構えで待ち構えている。


敵兵

「なっ、なに!?」


敵兵

「お、押すな!

う、うわぁ!」


敵襲の最前列は異常に気付いた。

しかし、もはや後ろから押され、前に進むしかない。


セージ

「斬り捨てろ!」


統率を失った敵襲をバッタバッタと倒していく第2騎士団。

それでも押されて敵襲が前に出てくる。


一方的な展開だった。


敵の司令官が無能だったのかもしれない。

無謀な前進を即座に止めることが出来なかった。


戦力の大半を失ってから、ようやく退却を始める敵兵たち。

だが、それも中途半端。

どんどん第2騎士団の追撃にあい、倒れていく。


騎士

「予想以上にうまく進んでいます。」


セージ

「油断するなよ。

予定通り、一部を逃がすぞ。」


騎士

「はっ。」


敵兵の一部をバレティアの方向に逃がす。

あえて、だ。


敵兵たちは必死に逃げるだけだ。

回りもろくに見る余裕もない。

自分たちが泳がされていると考えもしない。

ただ、ひたすらに仲間のいるバレティアへ。


セージはひそかに後を追う。

目的を気取られないように。


セージの目的。

それは襲撃者に続いてバレティアになだれ込むこと。

バレティアは城塞都市。

本気で守れば、入り込むことは容易ではない。それはセージがもっとも知っている。


もちろん、バレティアにも秘密のルートは存在している。しかし、バレティアにいる敵が掌握している可能性もある。

通って、そこで、ドン、っと狙われる可能性がある以上使いたくない。


だからこそ、泳がせたのだ。

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