百田先生の場合
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今回は百田先生視点です。
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目が覚めた時。
そこはベッドの上だった。
ベッド、と言っても立派なものではない。
戦場で負傷した者たちが地面に並べられた簡易なベッドに沢山横になっている。
この治療スペースに横になっている者は、治療の意味がある、と判断された者たちだ。
治療は無意味、死を待つのみと判断された者は放置されている。
百田先生は負傷した。
モンスターに腕を噛みちぎられた。
片腕を失う大怪我だった。
幸い、命に別状はなかった。
そして、更に幸いなことにリズムリア王国軍は他の国に比べて潤沢な回復薬を用意していた。
これはひとえにアキラの存在が大きい。
大量の回復薬を格安で供給してくれた。
百田先生は腕にはめられた奴隷の腕輪を見る。
いつもとは違う奴隷の腕輪だ。
いつもの奴隷の腕輪はモンスターの胃袋の中だ。もっとも、そのモンスターが生きているとは思えないが。。。
頭が冴えてきた。
今ならわかる。
大怪我をして当然だ。
後衛職である賢者なのに、剣を握り、前線で戦っていたのだ。
だが、魔法の使えない賢者では、それも仕方なかったのかもしれない。
そう。
今の今まで、自分が魔法を使えないことに違和感を持っていなかった。
普通なら、あり得ないことだ。
原因はわかっている。
奴隷の腕輪だ。
以前にも同じようなことはあった。
平田君による精神制御。
そして、今回は馬場君だ。
彼によって精神制御をされていた。
そして、私は奴隷の腕輪が外れた為に記憶が戻ってきたんだ。
魔法などのスキルを失っていることを当然のこととして受け入れていた。
そして、リズムリア王国に仕えるのが当たり前と考えていた。
馬場君と平田君では大きな違いがある。
平田君は個人の喜びの為に私たちを支配した。
しかし、馬場君は違う。
馬場君本人はほとんど得をしていない。
私たちに対して、ほとんど接触をしていない。
今なら理由がわかる。
私たちを大人しくさせる為だ。
私たちは元の世界の仲間を救うためならなんでもした。
それが間違っていたとは思っていない。
でも、馬場君に精神制御されたことにより、バレティアで平穏な日常が送れていたのも事実だ。
私は新しい奴隷の腕輪をつけられている。
逃ることも、抵抗することも出来ない。
でも、、、真実を知ってしまった。
魔王軍には勝利した。
だけど、私たちもボロボロだ。
この後の流れについては一兵卒である私にはわからない。
残党狩りに参加させられるのか、
バレティアに帰るのか。
帝都に向けて移動することになった。
移動しながら、被害状況の確認が行われた。
小川さんと赤沢さんが亡くなっていた。
テイマーと魔法使いだ。
それが従魔無し、魔法無しで戦っていたんだから、当然と言えば当然かもしれない。
馬場君のせい?
どう考えたらいいのかわからない。
第2騎士団にも相当な被害は出ている。
貴族たちの寄せ集めもかなりの死傷者が出ているようだ。
そして、今回の勝利は北条君によってもたらされたらしい。
さすが勇者に選ばれた北条君は違うわ。
北条君には会えていない。
私たちはリズムリア王国軍のただの兵士。
魔王討伐の英雄に会いに行くことも出来ない。
今回の戦いに勝利したことで、魔族の動きは鎮静化するだろう。
各国の関係も改善したと思う。
現実的に兵の消耗が激しく、すぐに戦争などを行う余裕がない、というのもある。
世界は平和に近付くだろう。
クラスのみんなはバレティアに戻れば、すぐに日常生活に溶け込んでいくと思う。
・・・私は?
事実を思い出し、気持ちの整理がつかない。
どうすればいいの?
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