マサキの場合
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今回はマサキ視点です。
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状況が理解出来ない。
覚えているのは煉獄のベスヴィオスに負けたところまでだ。
魔王が現れ、本気を出した煉獄のベスヴィオスの激しい炎に焼かれ、意識を手放した。
次に目を覚ました時はベッドの上だった。
助かった。
それが最初の感想だった。
でも、俺が目を覚ましたことが伝わると色々な人が俺に会いにきた。
そして、口々に魔王討伐の礼を述べてきた。
???
俺は魔王と戦う前に負けたんだ。
でも、一緒に戦ったグエンさん、フレデリカさんまでもが、俺が魔王を倒したと証言した。
俺の実感としてはグエンさんやフレデリカさんの方が俺より強い。
そして、魔族の幹部はその2人よりも強い。
それよりも強い魔王に俺が勝った?
何かの悪い冗談?
敗北を隠蔽するためのプロパガンダ?
しかし、事実として魔王軍との戦いには勝利していた。
もやもやする。
どこにも答えがない。
これが勇者の力なのか?
どうせなら、気絶する前に勇者の力には発動して欲しいものだ。
連合軍は帝都まで引き揚げた。
そこで各国からの援軍は解散し、それぞれの国に戻っていく。
残党狩りや周辺の警戒はドバン帝国が行うことになったようだ。
俺は帝都に入ると宮殿に特別に部屋を用意された。豪華な部屋だ。
ここで傷が癒えるまで休んで欲しいとのこと。有難いことだ。
多少の火傷の跡は残ったが生活に支障が出るほどではない。
今日は戦勝記念パーティーだ。
主役は総司令官として連合軍を勝利に導いたリズムリア王国のアーサー殿下。
それと、俺。
なんの実感もないのに挨拶をさせられる。
正直、何を言えばいいのかわからない。
でも、断ることも出来ない。
マサキ
「マサキです。
連合軍の勝利に貢献出来たことを嬉しく思います。
魔族との戦いは激しく、お恥ずかしい話ですが、途中から記憶がありません。
ですが、ともに戦ったグエンさん、フレデリカさんが言うには魔王を私が倒したそうです。
もし、その魔王を倒すほどの力を自由に出せていたら、ともに敵陣奥地まで突入した、各国の精鋭の方たちを死なせずに済んだかもしれません。
申し訳ございません。
ですが、彼らの頑張りがあったからこそ、私たちは魔王のもとまでたどり着けたのです。
私1人の力ではなく、みんなで勝ち取った勝利です。
讃えるのであれば、あの場で戦ったみんなを讃えてください。
どうぞよろしくお願い致します。」
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途中から何を言っているのか俺自身もよくわからなかった。
でも、口々に俺のことを讃えてくれた。
ひっきりなしに来る人たちの対応をしていたら、サッと俺の前が空いた。
レズン皇帝だ。
レズン
「閃光の勇者マサキ。
此度の活躍、誠に見事であった。」
マサキ
「もったいない御言葉です。」
レズン
「勇者であるそなたに頼みたいことがあるのだが。」
マサキ
「なんでしょう?」
レズン
「魔王は倒したが魔族の脅威がすべて去った訳ではない。特に今回の魔王軍侵攻のルート上にあった国々の被害は甚大だ。
我々は軍の再編を終え次第、残党の討伐と避難した住民の帰国、復興支援を行っていく。
その戦いに協力してもらえないだろうか?
魔王を倒した勇者が協力してくれている、という事実は民に安心と希望を与える。
どうだろう?」
マサキ
「私は新生ドバン王国に要請され、今回は特別に参戦しただけです。他国の作戦に従事するのは、ちょっと。」
レズン
「無論、
カルマール王には話を通してある。
フラメル王国にいるそなたの家族への支援は継続する。
もちろん、そなた本人にも満足のいく生活を保障しよう。
稀代の英雄であるそなたの力を眠らせておくのは世界の損失。
世界の安定の為に力を貸してくれまいか?」
マサキ
「考えさせてください。」
レズン
「すまんな。
魔王との激闘で心身共に疲れているだろう。
ゆっくり休み、
じっくり考えて、
結論を出してくれればいい。」
マサキ
「ありがとうございます。」
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