ボゥの気持ち
僕
「ありがとう。
じゃあ、まだ戦いの最中だから、みんなは持ち場に戻って。
強い敵がいたら、倒しておいて。
あっ、ハナ、
これ持ってて。」
渡したのはポータブル版転移システム。
現在各店舗で使用している転移システムのポータブル版。
実験農場に設置している転移システムのターミナルに、このポータブル版への転移も用意している。
ただし、いつもはマジックバックにポータブル版転移システムは入れているので使用は出来ない。
僕はリターンポイントでパエルモに帰る。
そして、満腹亭へ。
入口にはカミラさんがいた。
カミラ
「おかえりなさい。
早かったですね。」
僕
「ちょっとトラブル発生してボゥに会いにきただけなんだ。
すぐに戦場に戻るよ。」
カミラ
「そうなんですね。」
カミラさんと別れて、庭へ。
庭でゴロンとしているボゥがいた。
僕
「ボゥ、今、いいかな?」
ボゥ
『大丈夫だよ。』
僕
「色々あって、テイムスキルが失くなっちゃったんだ。
だから、ボゥの好きにしてもらっていいんだけど、どうする?」
ボゥ
『ここが好きなんだ。
このまま、ここにいちゃダメかな?』
僕
「もちろんダメじゃないよ。
従魔じゃなくなったけど、これからもよろしくね。」
ボゥ
『うん。』
ボゥと話をしていると、アイラさんがやってきた。
ハジメを抱っこしている。
アイラ
「戻っていたのか。」
僕
「緊急帰国。
またすぐに戦場に戻るよ。」
アイラ
「何があったんだ?」
僕
「説明が難しいんだけど、
ざっくり言うとテイムスキルが失くなったんだ。それでボゥの様子を見るために戻ってきたんだ。」
アイラ
「なっ!?
で、大丈夫なのか?」
僕
「ボゥは今の生活が気に入ってるから、このままでいいって。
他のメンバーも変わらずだって言ってたよ。」
アイラ
「従魔のこともだが、スキルを失うというのは尋常ではない。
アキラの体は大丈夫なのかを心配していたんだ。」
僕
「大丈夫だよ。
いくつかのスキルが失くなったけど、生活には影響ないかな。」
アイラ
「そうか。
良かった。」
僕
「本当はみんなとゆっくり話がしたいんだけど、まだ決戦の最中だから、戻るね。」
アイラ
「魔王との戦いは大丈夫なのか?」
僕
「魔王はもう倒したよ。
でも敵の数が多いからね。
もう少しかかると思う。」
アイラ
「大丈夫だとは思うが気をつけるんだぞ。
戦場には予期しない危険はつきものだからな。」
僕
「ありがとう。
終わったら戻るから、みんなによろしく言っといて。
行ってくるね。」
僕は再び転移した。
転移した先はハナのところ。
ハナは連合軍の本陣に近くに移動していた。
僕
「ハナ、ありがとう。
引き続きアーサーさんの護衛をお願いね。」
ハナ
『・・・わかった。』
本陣は忙しそうです。
アーサーさん、レズン皇帝、カルマール王、が次々に来る伝令の報告を聞きながら、色々な指示を走らせている。
基本的に伝令が走ってくるから、情報とのタイムラグがある。
そして、指示が伝わるにも時間がかかる。
そういうのを見越して指示を出している。
大変だね。
僕はボケーっとその様子を見ていた。
忙しそうな人たちの視線は冷たい。
そんな僕を発見したアーサーさん。
アーサー
「すまん。
少し席を外す。」
そう言うと僕のところに歩み寄ってきた。
アーサー
「アキラの従魔には助けられた。
ありがとう。」
僕
「ハナが頑張ってくれたみたいだね。」
僕は本陣に立つ巨木を見上げながら言った。
アーサー
「それで、どうしたんだ?」
僕
「魔王を勇者マサキが倒した、よ。」
アーサーさんは僕のことをじっと見てから、
アーサー
「そうか。
それでいくんだな?」
僕
「はい。
グエンさんとフレデリカさんがそう証言するんじゃないかな。
勇者マサキは気絶して、混乱しているかもしれないな。」
アーサー
「2時間後、花火を敵陣深くで上げてくれ。」
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