選択
僕
「決めました。」
明智
「早いね!?
本当にもう決めたのかい?」
僕
「ええ。
でも、その前に明智さんにお礼をしないと。」
明智
「お礼?」
僕
「ええ。
美味しいスイカのお礼です。
ちなみに作っている作物と用意できる調味料を教えてもらえますか?」
やっぱり昔の日本人だね。
みそ、醤油、塩がある。
マヨネーズとかケチャップはなかった。
野菜は豊富だった。
どうやら、この世界の気温も管理できるらしく、夏野菜、冬野菜、季節を変えながら作っているらしい。
もちろん、保存もバッチリできるらしい。
魚は川で釣り、鶏も飼っている。
牛肉や豚肉はたまに食べたくなったら出せるらしい。
・・・どうしようかな。
食事の幅を広げる提案をしたいところだね。
僕は、ゴマを用意して、搾る。
搾りたてのゴマ油。
それと豆板醤。
甜麺醤代わりのみそ。
豆腐。
ひき肉。
作ったのは麻婆豆腐。
それを食べてもらう。
明智
「面白い味だね。
初めてだけど、美味しいよ。
この赤いペースト以外はいつも使う食材だね。」
僕
「これは豆板醤と言って、豆に唐辛子と麹を入れて発酵させた調味料なんです。
みそや醤油があるから麹はあるだろうし、簡単な作り方は書いて渡しますんで、チャレンジしてみてください。」
明智
「これは素晴らしいお礼だよ。
唐辛子を料理に使うことはあったけど、そのままの唐辛子とは全然違う奥行きがあるね。
時間はいくらでもある。
色々試してみるよ。」
僕
「完成品が食べられないのは残念ですが、僕は行きますね。」
明智
「じゃあ、
選択を伝える場所まで案内しよう。
ついて来て。」
僕
「はい。」
明智さんについて行く。
家に入る。
本来は土足禁止だけど、特別にそのまま入るように言われた。
足の下に結界を感じる。
廊下に結界を張って、土足でも大丈夫にしてくれたんだろう。
案内された小さな部屋。
そこには映画でしか見たことのない古い電話があった。
しゃべるところは本体についていて、声が出る筒を手に持って耳にあてる感じ。
明智
「どんな選択をしたのかは聞かないでおくよ。あの電話機を使えばいい。
もう会うことはないだろうけど、君の人生に幸多からんことを祈っているよ。」
僕
「ありがとうございます。
明智さんもお元気で。」
僕は電話機に向かい歩き出し、明智さんは去っていった。
耳に筒をあてる。
『大罪者よ。
お前には2つの選択肢が与えられる。
1つは自らの世界を持ち、そこで自由に生きる。
2つ目は、大罪者としてのスキルを失い、元の世界に戻る。
どちらを選んでもかまわない。
さぁ、選択せよ。』
僕
「他に選択肢はないの?」
『なくはない。』
あれ?
意外と柔軟に対応してくれるの?
僕
「教えてもらえますか?」
『追放か殺処分。』
僕
「えっ!?」
かなり不穏な気配。
『大罪者をそのまま残すことはできない。
私の用意した世界を拒むのであれば、
どこに行くかわからない状態で世界の外に放り出すか、殺してしまうか。
どちらかになる。』
僕
「な、なるほど。
世界の外に放り出されるとどうなるんですか?」
『運が良ければ違う世界に流れ着く。』
僕
「運が悪いと?」
『どこでもない場所で悠久の時間を漂い続けることになる。』
僕
「・・・説明有難うございました。」
『では、選択せよ。』
ゴクリ。
唾を飲み込む。
たぶん、冗談が通じる相手じゃない。
そして、やっぱりなし、とかも認めてはくれないだろう。
僕
「僕は、、、
僕の選択は、、、」
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