隠居
明智
「『大罪スキル』を全て集めると圧倒的な存在となり、競う相手がいなくなる。
そうすると世界が停滞すると、神様は考えているようだ。」
僕
「停滞を嫌がるんですよね?」
明智
「その通り。
そのため、大罪スキルをすべて集めると、選択を迫られる。
1つは世界から抜ける。
私が選んだ選択肢だね。
その代わり、小さな世界を与えられる。
ここは私の箱庭だ。
十分な広さもある。
衣食住、何も困らない。
欲しいものはすべて手に入る。
私が静かな生活を望んだから、このような景色になっている。
人も、私はカリナがいれば十分だから、これだけだが、沢山の人が欲しければ増やすことも出来る。」
自由自在に出来る箱庭のような世界、、、
明智
「もう1つは『大罪スキル』を失い、先ほどまでの世界に戻る。
こちらは私も選んでいないから、詳細に説明は出来ないけど、言葉通りの選択だと思う。」
僕
「『大罪スキル』はどうなるんですか?」
明智
「どちらの選択をしても、新しい所有者が生まれる。
ただし、それは明日かもしれないし、100年後かもしれない。
それにスキルの所有者が目立った活動をするかどうかもわからないからね。」
僕
「その2択なんですか?」
明智
「ああ。
絶対に他にないとは言いきれないけど、私が提示されたのは、今の2つだし、私に教えてくれた人も、同じことを言っていたよ。」
僕
「明智さんはどうして今の選択をしたんですか?」
明智
「う~ん、
理由は色々あるんだけど、
私はね、
異世界転移をしてから戦いの連続だった。
ずっと戦いに身を投じ、『大罪スキル』をすべて集めた時には40年ほど経っていた。
もう疲れていたんだよ。
『大罪スキル』が世界にばら蒔かれれば、また戦いに巻き込まれるかもしれない。
そして、今度は勝っても、『大罪スキル』を手に入れることはできない。
また違う人間に移る。
延々に戦い続けることになるのではないかと不安を感じていた。
それに年齢的なものもある。
見た目ではわからないけど、
私はね、
当時59歳だったんだ。
そして、暴食のスキル、『魂の捕食』が非常に魅力的だった。」
僕
「そう言えば、それ、なんなんですか?
あんまり効果がわからなかったんですけど。」
明智
「一言で言えば、
若返り、だよ。
老化によって力を失っていく魂を食事によって補充することができる。
君のように若いとなんの実感も無いだろうけど、60歳目前の当時の私には若返っていた体が再び、おじさんになってしまうのは恐怖でもあったんだよ。」
僕
「ちなみに、
明智さんは今おいくつですか?」
明智
「もう年齢はわからないね。
この世界は君たちのいる世界とは時間の流れ方が違う。
年数には意味がないんだよ。
私はここでカリナとゆっくりと過ごし、いずれ死んでいくだろう。」
僕
「カリナさんは一緒にこの世界に来られたんですか?」
明智
「私が作った。
人を連れてくることはできない。
この箱庭の世界では、ほとんどのことができる。人を1人作るぐらいは簡単だ。
ただ、すべて簡単に思い通りに出来ると退屈になってしまうからね。
農業は自然に任せて、自力でやっているよ。
さっき食べたスイカも私の自信作だよ。」
なるほど。
不自由なことを残すことで精神的なバランスを取っているのかもしれない。
明智
「さてと、
アキラ君、
ゆっくり悩んでもかまわない。
元の世界に戻る場合は、さっき消えた瞬間に戻れるらしいからね。
そして、決まれば、決定を神様に伝えるんだ。
この世界とバランスを取る為に電話のかたちになっている。
私の家の中にある。
使ってくれ。」
僕
「わかりました。」
運命の2択。
万能の力を持ち箱庭の世界に閉じこもる。
力を失って元の世界に戻る。
もしかしたら、神様に反抗するような選択もあるのかもしれない。
どこの誰だかわからない神様のルールに従う理由は本来無いからね。
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