大罪

『傲慢を取得しました。

傲慢、暴食、強欲、色欲、嫉妬、憤怒、怠惰

が集まりました。

大罪が発動します。』


ん?

いつもと違う。

いつもなら大罪系のスキルを手に入れると、スキルレベルがアップしていたのに、今回は謎の『大罪』が発動するというアナウンス。


何が起きるんだ?




急に視界が切り替わる。

転移した時に起こる現象だ。

どこかに強制転移させられた?


戦場にいたはずが、

目の前に広がるのは、

のどかな田舎の田園風景。

美しい田んぼ。

遠くには森。

1件の大きな日本家屋。

その庭には洗濯物が干されている。



人がいるってことかな?


とりあえず日本家屋に向かって歩いていく。


「やぁ、よく来たね。」


男の声。

縁側からだ。

縁側には30過ぎぐらいの男性と、20代前半ぐらいの若い女性。

男は平凡な日本人顔。

女性はモデルや女優をやっていそうな美しさだ。

そんな2人がゆったり縁側で寛いでいる。

カットされたスイカもある。


「こんにちは。」


とりあえず、挨拶はしてみる。

敵意は感じない。


「安心しなさい。

君の先輩だ。

こちらへ来て座りたまえ。」


言葉に従い、縁側に腰掛ける。


「どうぞ。」


スイカを僕にも勧めてくれた。

1つもらって口にする。


「美味しいです。」


男は嬉しそうに笑った。


「喜んでもらえて良かったよ。

私が作ったスイカなんだ。

さてと、

今はスイカを楽しんでいる場合じゃなかったよね。

状況を説明しようか。」


「お願いします。」


「まず、私の名前は明智平八郎だ。

そして、そっちが妻のカリナだ。」


「アキラです。」


明智

「私はね、

アキラ君、君の前に7つの大罪スキルを集めた者だよ。」


「えっ!?」


明智

「私も異世界から来てね。

『傲慢』というスキルを与えられた。

『傲慢』は圧倒的なアドバンテージを与えてくれた。私はいつの間にか最強なんて言われるようになった。

そして、『憤怒』というスキルを持った相手と衝突した。命がけの戦いの結果、私は『憤怒』を手に入れた。

この大罪スキルには相性がある。

『傲慢』は相手を上回るステータスを手に入れる。だからステータスアップ系の『憤怒』や『暴食』とは相性がいい。

そこから、異常なスキルを持っている人間を探して、奪っていった。

そして、すべてを集めた時、

君のように先輩と対面した。」


「先輩?」


明智

「そう。

そもそも大罪スキルは、何故存在するのか?というところから説明しようか。」


「スキルに存在理由なんてあるんですか?」


明智

「あるんだよ。

まず、大前提として、すべてを作りだした神様のような存在がいる。

これは間違いない事実として受け止めてほしい。

でないと、この後の説明も理解出来ないからね。」


「わかりました。」


とりあえず聞いてみよう、という感じ。


明智

「神様は直接的な関与はしない。

することはルールを作ること。

そして、

神様は変革を望み、停滞を嫌う。

何が変革であり、何が停滞かは、おそらく我々の感覚とはズレがある。

だが、変化が発生することを良しとする傾向はあるようだ。

ここまでをとりあえず受け入れてほしい。」


「納得する必要はないと?」


明智

「君も日本人だろ。

いきなり、こんな話を納得できる宗教観は持ち合わせていないだろ。」


「そうですね。」


明智

「だけど、神様は、

異世界から人が入り込む仕組みをつくり、

その中に超強烈なスキル『大罪スキル』、

それを持った人間を入れ込む。

大罪スキル同士を奪い合いたくなる構造もセットで用意されている。

凄まじい力を持つ『大罪スキル』は周囲を巻き込んで戦火を拡大させる。

そういう流れだね。」


「戦争が科学を発展させるに近いイメージですか?」


明智

「そうだね。

この世界だと科学じゃないけどね。

闘争が変革をもたらすと考えているらしい。」

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