決断する王弟

レズン

「罵りあっても話が進まん。

建設的に話をしてもらいたい。

カルマール王の提案についてだが、、、

ジプート連邦のデニム将軍、

将軍は当代きっての名将だ。

ご意見を聞かせてもらえるか?」


デニム

「うむ、、、

経験不足と言う批判は無意味だ。

ドラゴンは経験を積んでドラゴンになる訳ではない。産まれながらにしてドラゴンだ。

逆に鳥はどれだけ経験を積んでもドラゴンにはなれない。

経験、知識、そんなものは周囲でサポートすればいい。」


レズン

「では、、、」


デニム

「私はアーサー殿を支持する!

アーサー殿にこの老兵の命を預けよう。

刺し違えても魔王の首を叩き落としてやるわ!」


ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ


レズン

「デニム将軍、

覚悟をお聞かせ頂き感謝する。

スノーデン王国ジャクソン殿、

貴殿のご意見は?」


スノーデン王国代表者

「アーサー殿を支持する。

負け続きのドバン帝国が指揮するよりも何倍勝率が上がるでしょう。」


ドバン帝国高官

「なんだと!」


レズン

「やめよ。

ジャクソン殿もあまり挑発的な言動は控えて頂きたい。今は人間同士で争っている場合ではない。

他に意見のある方はいらっしゃるか?」


ざわざわとはするが、誰も意見を言わない。

なにせ、新生ドバン王国、ジプート連邦、スノーデン王国という大国が既に支持を表明したのだ。

それに異議を唱えられる国はほとんどいない。


レズンが周囲を見渡す。


ドバン帝国高官

「陛下!

お待ちください!

対魔族の連合軍の指揮は代々我々ドバン帝国が行って参りました。

その知見を活かさねば勝利はございません!」


レズン

「では、アーサー殿を支えるために、その知見を活かしてくれ。」


ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ


今の発言はドバン帝国の皇帝がアーサーが総司令官につくことを支持した、ということだ。


レズン

「アーサー殿、

各国の総意として、総司令官の就任を要請したい。

受けてくれるか?」


拒否など出来ない。

ここで拒否などすれば、各国の士気は下がり、総司令官選びは確実に難航する。

下手をすれば連合軍が空中分解してしまうかもしれない。

完全に外堀を埋められ、拒否が出来ない状況だ。


アーサー

「わかりました。

総司令官の任、お受け致しましょう。

ただ、私はそれほど優秀な男ではない。

各国の支援がなければ魔王には勝てないだろう。だが、ここに集まった皆が力を貸してくれるなら、魔王に勝利することを約束しよう。」


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議場が拍手に包まれる。

一部ドバン帝国の高官たちは不満な顔をしているが、皇帝の判断を覆すようなことはしない。


レズン

「それでは議長役をアーサー殿に替わろう。

資料や情報はすべて提供する。

今後も全力でサポートするから安心して欲しい。

もし非協力的なドバン帝国の者がいたら、いつでも私に言ってくれ。

即刻首をはねる。」


さらっと物騒なことを言うレズン皇帝。

これは冗談の類いではない。


演壇でアーサーとレズン皇帝が握手をかわす。

その時、アーサーは小声で、


アーサー

「カルマール王と共謀したな。」


レズン

「最善の判断をしたまでだ。」


アーサー

「責任を持って、最後までサポートしてもらうぞ。」


レズン

「無論だ。」


レズンはにやりと笑い、演壇を降りた。

演壇に立ったアーサーは、


アーサー

「魔王軍との決戦は近い。

もう時間がない。

明日よりガハラ平原に向かって移動を開始する。布陣や各国の役回りなどは移動しながら考え連絡を入れる。

今日中に決められることはどんどん決めていく。異論があればいつでも言って頂きたい。

勝つための意見ならいつでも歓迎だ。」


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議場の空気が熱くなる。


総司令官をアーサー。

副官をレズン皇帝とカルマール王が務めることになった。

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