謙虚な皇帝

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今回はアーサー視点です。

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議場の中は異様な雰囲気だった。

人類史上最大の戦争の総司令官を決める会議だ。重要なことは間違いない。

大国は誰が総司令官になるかを考える。

小国はどの国を支持すれば比較的安全な場所を獲得できるかを考えている。


今回は非常に大きな戦争だ。

戦場のどこに配置されるかで被害は大きく変わってくる。それは小国にとっては死活問題だ。



パエルモ卿に来て欲しかった。

それが率直な感想だ。

セージ団長は外せない。国際的な存在感が大きい。しかし、こういう交渉事が得意な訳ではない。

ネルソン子爵も無能という訳ではない。勤勉で真面目な男だ。だが、国同士の探りあいにおいてはパエルモ卿の方が一枚も二枚も上手だろう。


布陣に不安はあるが、そんなことも言ってられない。もう会議が始まるのだ。




議場では前に演壇があり、

そこを向くかたちでたくさんの国の代表者が座っている。


皇帝レズンが演壇に上がった。


レズン

「これより会議を開始する。

まずは各国の代表者に集まってもらったことに御礼を述べたい。

そして、これからの会議を行う為に、現在の状況を説明させて頂く。」


スノーデン王国代表者

「少しよろしいかな。

何故、レズン殿が仕切っているのだ?

議長に認めた記憶はないが?」


レズン

「とにかく時間がないのだ。

状況がわからねば総司令官の選任も出来ないだろう。

総司令官を選ぶまで。

そこまでは議長役を認めて頂きたい。」


レズンの低姿勢に西側の小国群は驚いた。

圧倒的上位者。

それがドバン帝国。

そのドバン帝国が低姿勢になっている。


レズン

「話を続けさせて頂きます。

決戦の地はガハラ平原。

魔王軍の侵攻速度、両軍の規模を考えると、ここしかない。

そして戦力についてだが、

魔王の戦力が未知数、

また魔族の幹部が何名いるか不明、

という状況だ。

そのため戦力の比較が出来ない。

だが、仮に魔王の戦力が幹部と同等であり、魔族の幹部が3名参加していると想定した場合、勝てる可能性は5パーセント以下だ。」


ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ

議場がざわつく。


ジプート連邦代表者

「そのシミュレーションの信頼性はどの程度なんだ?」


レズン

「狂嵐のボウザー、

不動のエベレスト、

氷焉のアルタイル。

過去に戦った魔族の幹部及びその戦力から算出している。

信頼性は高いと考えて頂きたい。」


ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ


スノーデン王国代表者

「我々の実力を低く見積もっているのではないか!

スノーデン王国の強兵を見くびってもらっては困る。」


レズン

「もちろん各国の兵の強弱はあるだろう。

今回のシミュレーションはあくまでも、人数をドバン帝国の兵士の戦力で計算したものだ。だが、それでも十分意味はあるだろう。」


ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ


カルマール

「私から提案があるのだが、

よろしいかな?」


カルマール王が立ち上がり、周囲を見回す。


レズン

「提案をお聞かせ願おう。」


カルマール

「ドバン帝国の行ったシミュレーションの精度については色々意見があるでしょう。

しかし、そんなことはどうでもいい。

大事なことは、

魔王軍は強大であり、優秀なリーダーのもと、一致団結して戦わなければセントラル大陸を魔王に奪われてしまうということです。

そして、この連合軍をまとめあげ、魔王を倒し、窮地を救える英雄はリズムリア王国のアーサー殿を除いて他にはいない!」


ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ


ドバン帝国高官

「アーサー殿が優秀であっても、魔族との戦闘経験が足りていません。

やはり、魔族との戦闘経験豊富な我々が指揮しなければ戦えません。」


スノーデン王国代表者

「ドバン帝国の指揮では不動のエベレストに負けた戦いの二の舞になる。」


ドバン帝国高官

「何を言う!

結果的には不動のエベレストは倒せたではないか!」


レズン

「静かに!

勝手な発言は控えて頂きたい!」

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