ボルト
ある日。
僕はボルトの街を見に行くことにした。
ボルトはセントラル大陸西部の都市で、ワインの産地だ。
満月亭で使うワインは主にボルト産とチリーノ産。特にボルト産は高級ワインの代名詞になっている。
ここのブドウ畑に被害が出ると困るのだ。
大陸西部の都市なので気になって見にきました。
街は平和そう。
ただ、活気がある、と言うより、ざわついている感じがする。
いつもの酒屋に顔を出して、ワインを仕入れるついでに話を聞く。
僕
「なんか街がざわざわしている感じなんだけど、何かあったの?」
酒屋
「避難民だよ。
なんでも、魔大陸から大軍が攻めてくるらしくて、逃げてきてるんだよ。
ボルトは過去の魔族の攻撃でも被害がなかったから、余計に避難民が集まっているらしい。」
僕
「でも、受け入れる余裕はあるの?」
酒屋
「無いだろうね。
ここに住ませるなら、仕事を与えないとダメだけど、ここはワインの街だからね。
ブドウが増えないとワイン工場も仕事は増やせないし、ブドウ畑に向いている土地はもう耕しているからね。そう簡単には増やせないだろうね。」
僕
「なるほどね~。」
酒屋
「そうだ!
アキラさんは商人で街の外にも顔が広いんだろ。
市長の相談にのってあげてよ。」
このボルトはワインで成立している街で、市長も大きなブドウ畑を持つ生産者でもあるのだ。だから、ワイン関係者は市長とも親しい。
僕
「相談にのっても、たいして力にはなれないと思うけど、、、」
酒屋
「まあまあ、
そう言わずにお願いしますよ。」
酒屋さんに連れられて、市庁舎に到着。
酒屋さんが市長にアポのお願いをしたら、すぐに会えるということになった。
酒屋
「じゃあ、宜しくお願いしますよ。
私は店もあるので帰りますね。」
おいおい!
放置プレイか。
すぐに役人さんが市長の部屋まで案内してくれた。
逃げ出すチャンスがない。
役人
「失礼致します。
商人のアキラ氏をお連れしました。」
市長
「お通ししろ。」
ボルトは小さな都市国家だ。
大陸西部にはこういう都市国家が乱立している。
国と言っても、ボルトの街と周囲にある小さな農村などだけで構成されているだけだけどね。
でも、市長イコール国王に近い。
まぁ、大きな国の国王ほど権威とかはないけどね。
市長
「よく来てくれた。」
僕
「急に申し訳ございません。」
市長
「以前から大量にワインを購入してくれているのは知っていたが、まさか、あのアキラ氏だったとはね。」
僕
「あのアキラ氏?」
市長
「いくつもの国の食糧危機を救ったということで、君の名前は大陸西部で有名だよ。」
僕
「そうなんですね。
実感ないけど。」
市長
「この厄介な時に、アキラ氏が来てくださるとは有難い。」
僕
「たいしたことは出来ないですよ?」
市長
「いやいや、
相談にのって頂けるだけで助かりますよ。
実はですね・・・」
市長の説明によると、
ノルマンに近いところから次々と住民が逃げ出している。
そして、ボルト周辺は先日の氷焉のアルタイルによる被害も発生していない。
そのため、人気の避難先となっているようだ。
避難民を追い返す訳にもいかないが、かと言って受け入れるだけの余裕もない。
避難民に与える、食糧、住居、仕事。
どれも足りていない。
僕
「う~ん。
どっかに土地余ってないですか?」
市長は地図を広げて。
市長
「ボルトの範囲はここまでです。」
市長は指でぐるりと領地を囲う。
市長
「空いていると言えるのはここと、ここと、ここ。」
指で3ヶ所示す。
市長
「ただ、今使用していないのには当然、理由がございます。
この広い土地は強い傾斜地です。
とても農業には向きません。
こちらはスライムの群生地になっており、退治しても退治してもわいてきます。
こちらもモンスターの群生地です。ラージスネークというモンスターが大量に発生します。そのため使えないんです。」
なるほど。
難しそうだな~。
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