百田先生の出陣

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今回は百田先生視点です。

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少し時間を遡る。

バレティアにて。


セージ

「百田、今回の戦争には君たち全員に参加してもらう。」


百田

「今回、

本当に魔王との戦いになるんでしょうか?」


セージ

「おそらくな。

ドバン帝国からもたらされた情報だが、信憑性は高いだろう。」


百田

「私は参加します。

ですが、子どもたちはバレティアに残して頂けませんか?」


セージ

「それは出来ない。

君たちは貴重な戦力だ。

世界の命運を掛けた戦いに出し惜しみは出来ないんだ。

わかってくれ。」


百田

「・・・承知しました。」


セージ

「彼らももう子どもではない。

いや、もう子どもをもうけている者もいるだろう。その子どもたちの為にも戦う必要があるんだ。

理解してくれ。」


百田

「・・・みんなに伝えてきます。」





セージ様のもとを後にする。


確かにセージ様の言う通りだ。

このバレティアで保護されてから、平穏な毎日を送れている。

私たちは犯罪奴隷であるが、騎士と同等の扱いをしてもらっている。

セージ様の温情だ。

豊かな生活を送り、結婚も認めてもらっている。



更に北条君がもたらしたクラスメートの情報をセージ様に報告したところ、2人を発見してくださった。


1人は既に結婚をしており、バレティアには来なかった。

もう1人は傭兵団に所属しており、セージ様の招きに対して報酬を求めたらしい。

金額面で折り合いがつかずバレティアに招くことは出来なかった。

だが、元気にはしているようだ。





私はみんなを集めて事情を説明した。


柴田

「やりましょう!

お世話になっているセージ様の恩に報いる良い機会ですよ。」


三上

「そうだな。

負けりゃ、いずれリズムリア王国も戦場になる。その前に倒さないとな。」


朝倉

「私はこんなお腹だから行けそうにないかな。」


朝倉さんが自分の大きなお腹を撫でる。


大野

「その分、俺たちが倒してくるよ。

安心して待ってな。」



みんなは想像以上に前向きに考えてくれている。

頼もしい。

みんな、成長しているんだ。。。


・・・でも、何故だろう?

喉に小骨が刺さったような、なんとも言葉に出来ない気持ち悪さがある。


でも、理由がわからない。

何もおかしなことはない。

なのに、、、



百田

「みんな、

今回は非常に危険な戦いになるし、長期間の遠征になるわ。

王都からアーサー殿下が到着されたら、すぐに出発だから、準備はしっかりとね。」


杉山

「大丈夫だって。

俺たち、戦場には慣れているからね。」


赤沢

「そういうのを油断って言うのよ。」


みんな、命がけの戦争に行くのに明るい。

慣れ?

自信?


もう、誰かを殺すことになんの抵抗もない。

仲間が死ぬことも受け入れてしまった。

私たちは変わった。

住む世界が変わったんだから当然だ。


この世界に来た当初は、

拒絶して、

否定して、

『帰る』という言葉だけで、現実を見なかった。

今はみんな、現実を、この世界を、受け入れている。


いつからだろう?

バレティアでの落ち着いた生活が私たちを変えたのかな?





数日後。

アーサー殿下が到着した。

西部貴族の軍団も一緒だ。

かなりの数になる。


第2騎士団もほぼ全員が参加する。

ほとんど残さない。

国王陛下のご命令だ。

留守の間は第1騎士団からバレティア防衛用の部隊が派遣される。

セージ様は不本意ではあったみたいだけど、拒否権はない。


私もバレティアを出れば考え事をしている余裕もないだろう。

みんなと一緒に生きて帰ってくる。

それだけだ。

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