静かな日常

アーサーさんやパエルモ伯爵たちが出発して、街は静けさを取り戻しました。


と言うか、少し活気がない。

周辺の貴族たちの領地も含め、兵士が一斉に抜けたためだ。

パエルモは交易も盛んなので商人たちはいるけど、やっぱり街としては活気が足りないかな。


パエルモ伯爵不在の間は長男のジョシュア様が代理を務めるらしい。

まだまだ若いのに大変だね。

まぁ、執事のザバスさんがサポートするみたいだけど。


大きく変わったのは冒険者ギルド。

ギルドマスターのロイズさんがとても忙しそうだ。

元々パエルモ近郊は兵士の巡回も行われ、治安も良く、モンスターの被害も少ない。

隣のバレティアも同様だ。

だから、パエルモやバレティアはあまり冒険者には人気のないエリアなのだ。


しかし、大半の兵士が出払ったため、農村などに出てくる弱小モンスターの退治依頼がぐんぐん増えてきたらしい。

1件1件は少額の簡易な依頼ばかり。

ただ件数が増えて処理が追いつかないらしい。


ロイズさん、完全にやつれてたね。

今度、疲労回復アイテムでも差し入れしようかな。





そんなある日。


アイラ

「少し相談があるんだが、いいか?」


「どうしたの?」


アイラ

「実はママ友から離乳食について相談を受けてな。

基本はパン粥が中心らしいんだが、もう少しバリエーションが欲しいらしい。

簡単に出来て、赤ん坊が喜ぶような離乳食はないか?」


「離乳食か~。

ハジメちゃんはもう少し先だけど、考えておいた方がいいかもね。

ちょっと時間ちょうだい。」


アイラ

「ありがとう。」



離乳食。

赤ちゃんが、ミルクから食事に移行するために食べる食事。

だいたいはどろどろのところからスタートして、成長するに従って、徐々に固形物が増えてくる。


この世界の育児は元の世界の育児より乱暴だ。なにせ、みんなに余裕がない。

早く育てて、ある程度の年齢になれば農作業などを手伝う戦力にカウントされる。


だから、離乳食の期間も短い。

母乳で栄養を与えて、食べられるようになれば、少し柔らかい程度の食事に切り替える。


じっくり離乳食の期間を設けるのは、お金持ちや貴族たちぐらいだ。




さて、離乳食のポイントは、

作りやすさ。

栄養面。

消化の良さ。

それが大事かな。


本来ならアレルギーとかも気をつけないといけないけど、この世界はそこら辺はガバガバ。まったくアレルギーがないのか、強いアレルギーのあった子どもは早々に死んでしまうのか、あまり意識されていない。


元の世界では開けたらすぐに食べられる離乳食とかがあったけど、さすがに再現は無理かな。

そんな容器がないからね。




出来そうなのは・・・

フリーズドライ。

お味噌汁とかでよくあるやつで、乾燥してパリパリの状態になっていて、お湯をかけると元に戻る。


もちろん、フリーズドライを作るような機械はない。

僕が発明しようかなと思ってます。

細かく刻んだ野菜をぐずぐずになるまで炊いて、それを小分けにして、乾燥する。

そんな道具を作ろうかな。


使う野菜は、

ほうれん草、

にんじん、

とうもろこし、

さつまいも、

そんなところかな。


上手く出来たらコーラル商会に販売してもらおう。

いや、道具も貸し出して製造から全部丸投げしよう。それが楽でいいね。


値段は少し抑えたいな。

少しでも使える人を増やしたい。

たぶん、作れる量は多くないから、他の街まで売りに行くのは無理だろうな。

パエルモの街で使用する分ぐらいで十分でしょ。


フリーズドライを作る道具を1台だけにすれば、作れる量も決まってくるからね。





後日。

コーラル商会のマヘリアさんに試作品を見せたら大興奮。


マヘリア

「すぐに商品化しましょ。

これはみんな喜ぶわ。

工場と言ってもそれほどスペースもいらないし。

人さえ用意すればすぐに出来るわね。

後は保存性だけ確認すればいいかな。

1ヶ月後ぐらいには販売出来るんじゃないかしら。」


オムツに続いて育児用品の発売が決まりました。

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