来訪者
ハジメちゃんの名前を発表してから数日が過ぎた。
みんなにとって、初めての子どもだ。
アイラさんだけでなく、みんなが育児に協力してくれている。
ハジメちゃんが私の顔を見て笑った。
そんな他愛ない話をしながら、毎日が楽しく過ぎていく。
それとハジメちゃんを見たことで、みんなの子どもが欲しいという気持ちが高まったみたい。そして、出産して日も浅いのに、アイラさんが元気に動き回っているのも手伝って、もっと出産スケジュールを繰り上げようという話になった。
妊娠と出産で長期間満腹亭から離脱する前提で計画してたけど、実際にアイラさんが休んだ期間は1ヶ月にも満たない。
アイラさんも気分転換にお店に立ちたいと言うので、交代でハジメちゃんの面倒を見ている。
そんなある日。
アーサーさんとパエルモ伯爵がやってきた。
それも昼の営業時間中。
これってかなり珍しい。
僕
「アーサーさん、パエルモ伯爵、
そろって登場とは珍しいですね。」
ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ
お客さんが焦りまくってたよ。
なにせ、領主であるパエルモ伯爵は雲の上の存在。王族であるアーサーさんなんて雲の上どころか大気圏を軽く突破している感じ。
しかもアーサーさんは英雄扱いだから、余計にお客さんがパニックになっていた。
アーサー
「すまんな、アキラ。
火急の用件なんだ。」
パエルモ
「落ち着いて話がしたい。
どこか場所を借りられないか?」
僕
「じゃあ、2階へどうぞ。」
パエルモ
「すまんな。」
アーサー
「食事中の者たち、
騒がせてすまない。
気にせず食事を続けてくれ。」
僕らが2階へ上がると、ハジメちゃんを抱っこしたアイラさんがいた。
僕たち3人を見て、察したのか、礼をして1階へ降りて行った。
アーサー
「今のがアキラの子どもか?」
僕
「ハジメって名前です。」
アーサー
「そうか。
可愛いな。
うちもペネロペのお腹の中に赤ん坊がいるんだ。」
僕
「おめでとうございます。
いつ頃産まれそうなんですか?」
アーサー
「後2ヶ月ぐらいかな。
私は遠征中で立ち会えないだろうな。」
僕
「それは残念ですね。」
アーサー
「まぁ、仕方ないさ。
産まれてくる子どものためにも、負けられない戦いだからな。」
僕
「そうですね。」
アーサー
「単刀直入に言おう。
アキラ、今回の戦いを手伝ってくれないか。
魔王本人が攻めてくるなど初めてのことだ。
人類史上最大の戦いになるだろう。
アキラの存在は戦いの結果を左右すると考えている。
頼む。
力を貸してくれ。」
アーサーさんが頭を深々と下げた。
僕
「頭を上げてください。
僕も参加しますよ。」
アーサー
「本当か!?」
僕
「子どもたちが大人になる頃にセントラル大陸が魔族に支配されているなんて嫌ですからね。」
アーサー
「助かる!
まさかアキラと子どもの将来を語る日が来るとは思わなかったな。」
僕
「同感です。
ただし、参加の範囲は制限します。
僕と従魔が本気で暴れたら、それだけで勝ってしまいそうなんだけど、それはちょっと違う気がしているんで。」
アーサー
「・・・確かにな。
言いたいことはわかる。
で、どの程度に制限するつもりなんだ?」
僕
「う~ん、
魔王と幹部は倒そうかなって思ってます。
それ以外はみんなに頑張ってもらおうかな。」
アーサー
「十分だ。
と言うか、十分過ぎる。
それで、
アキラが倒したことは公表していいのか?
それとも黙っていた方がいいか?」
僕
「見られたら仕方ないけど、黙っていて欲しいかな。僕はあくまでもただの定食屋のオーナーでいたいから。」
アーサー
「わかった。
どこで合流する?
数ヶ月もかかる遠征に同行するつもりはないだろ?」
僕
「これを持って行って。」
青いボタンを渡す。
アイラさんに渡したボタンの試作品だ。
僕
「押せば僕に連絡が入る仕組みになっているんだ。翌日には合流するよ。」
アーサー
「便利な道具だな。
使わせてもらおう。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます