名前決定

「それでさ、赤ちゃんの名前なんだけど。」


アイラ

「おっ、もう考えてくれたのか?」


「産まれる前からいくつか候補は考えていたからね。」


アイラ

「聞かせてくれ。」


「『ハジメ』ってどうかな?」


アイラ

「アキラの世界の言葉か。

どういう意味なんだ?」


「スタートとか一番って感じかな。」


アイラ

「フフフ、わかりやすいネーミングだな。」


「安易かな?」


アイラ

「いや、私は気に入ったよ。

呼びやすくて、覚えてもらいやすい名前だ。」


「良かった。

もしダメ、って言われた時の為にストックは20個あったんだけどね。」


アイラ

「多いな。

男か女かわからなかったにしろ、20は多過ぎないか?」


「これでも性別がわかって減ったんだよ。

男の子ってわかる前は50個近くあったんだから。」


アイラ

「考え過ぎだ。

アキラの世界はどうか知らないが、この世界ではもっと適当だぞ。」


「ハハハ、

でも名前を考えるのは楽しかったよ。

今日の営業終わったら、みんなに発表しようか。」


アイラ

「そうだな。

みんなも興味津々だろうからな。」


「じゃあ、後でね。

あっ、でも何かあったらいつでも呼んでよ。」


アイラ

「ああ。わかった。」




そして、店の片付けを終えて。

みんなが待つ前にアイラさんが赤ちゃんを抱っこして歩いてきた。


リィズ

「もう体調は大丈夫ですか?」


アイラ

「もう問題ない。

こんなに体調がすぐに回復するとは思わなかったよ。」


ルーシュ

「赤ちゃんは?」


アイラ

「今は寝ているよ。

しばらく寝てくれると助かるんだがな。」


「じゃあ、赤ちゃんが寝てるから、大声はなしで名前を発表するね。」


アリエッタ

「おっ、待ってました。」


合いの手もいつもより小声。


僕はアイラさんの横に立つ。


「名前は『ハジメ』です。

みんな、よろしくね。」


マユラ

「ハジメちゃんか~。

可愛い名前ね。」


アイラ

「ハジメだ。

可愛がってほしい。」


すやすや眠るハジメちゃんの顔をみんなに見せる。


「それとみんなに報告が4つあります。」


アリエッタ

「なかなか多いね。」


「そうなんだよ。

まずは1つ目。

ついに満腹亭の裏で改装していた子ども棟が完成しました。

これで営業時間中も静かに過ごせるよ。」


アイラ

「お客さんの大きな声で起きてしまうこともあったし、ハジメの泣き声が1階に聞こえていないか心配な時もあったんだ。」


「これで子どもの人数が増えても心配いらないかな。

ちなみに子ども棟の庭にはボゥがいるから防犯対策もバッチリだよ。」


マユラ

「まぁ、ボゥに勝てる人間なんてほぼいないからね。」


「まだまだいくよ。

2つ目。

サクラの2号機が完成しました。

名前はモミジです。」


淡いピンクの髪色だったサクラ。

今度のモミジは赤髪です。


「サクラは満腹亭のお手伝いメインだったけど、モミジは家事のお手伝いをする予定。

これで子どもが増えても、妊娠が多少重なってもなんとかなるはず。」


カミラ

「サクラは優秀ですからね。

もう1人いればとても助かります。」


「サクラとモミジは相互に情報共有出来るから、ゼロから教える必要もないよ。」


ルーシュ

「優秀過ぎますね。」


「まだまだいくよ。

3つ目。

特製粉ミルクの試作品が出来ました。」


この世界にはまだ粉ミルクがない。

基本はママのおっぱい頼み。

おっぱいの出が悪いと、他のママに分けてもらうか、牛乳などで補うことになる。


でも、それだと授乳の度に起きないといけない。誰も代われないのだ。


「もちろん、母乳中心だと思うけど、夜間とかは飲める温度に調整したミルクをマジックバックに入れておくから、それで対応出来ると思う。」


よく3時間おきにミルクって言うけど、ミルクを飲ませるのにも時間がかかるし、それにオムツを交換したり、寝かしつけたりすると、次の授乳まで2時間しかなかったりする。

そのため、夜間の1回だけでも起きなくて眠れたら、かなり体力的に違うんじゃないかな。


「最後にこれ。」


赤いボタンを出す。

クイズの回答者が押すようなボタンだ。


「これを押せば、いつでも僕が持つ端末に連絡が入る。そしたら、すぐに戻ってくるからね。

もうすぐ魔王が攻めてくるから、万一の備えも必要でしょ。」


一同

「「「えっ!?」」」

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