昨日の敵

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今回はカルマール視点です。

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カルマールは資料を読みながら、新生ドバン王国が想像以上に順調に進んでいることに満足していた。


カルマール

「交易による利益が非常に大きいな。」


側近

「スノーデン王国やジプート連邦との交易では大幅な黒字が出ております。

このペースなら先の戦争で出た損失も3年程度で埋められる見通しです。」


カルマール

「だが、売る物がなければ交易は成立しない。それに下手をすれば国内の資産を海外に垂れ流すことにもなりかねない。

産業振興の手を緩めるなよ。

これからは武力ではなく、生産力で争う時代が来るのかもしれない。」


ダッダッダッダッダッダッ

兵士が駆け込んできた。


カルマール

「どうした?」


兵士

「ドバン帝国より火急の報せです。」


カルマールは兵士が差し出した書状を読んだ。書状といっても鳥が運ぶ簡易なものだ。


『魔王進攻の報せあり。最大限の援軍を乞う。』


カルマール

「至急、皆を集めよ。

魔王が動いた。

ドバン帝国からの援軍要請だ。」



そして、すぐに部下たちが集められた。


カルマール

「魔王が動いたようだ。

幹部ではなく、魔王本人だ。

新生ドバン王国はドバン帝国に最大規模の援軍を出す。

指揮は私が直接執る。

至急、準備にかかれ。」


側近

「ドバン帝国の罠の可能性はございませんか?」


カルマール

「可能性は低いだろう。

もし罠であれば、罠ごと打ち砕く。

それだけだ。」


武官

「陛下が直接指揮を執らずとも、私が指揮を執り、魔王など打ち破ってみせましょう。」


カルマール

「いや、私が指揮を執る。

各国の軍との橋渡しをしなければならない。この戦い、各国の連携が鍵を握る。

そのために私が行かねばならない。

もちろん、将軍にも参加してもらうぞ。」


武官

「はっ。」


カルマール

「それから各国に鳥を飛ばせ。

新生ドバン王国の参加表明と、各国への参戦要請だ。

帝国からの要請だけでは動かない国もあるだろう。

私からの要請の方が動きやすかろう。」


文官

「しかし、我が国からの要請とすれば、費用の請求などをされる可能性が高いです。

我々が出さずに帝国に負担させた方が得策では?」


カルマール

「くだらんことを言うな。

これはセントラル大陸を魔王から守る為の戦いだ。

出し惜しみをしている場合ではない。」


文官

「はっ。」


カルマール

「私は少数だけを率いて先行する。

事前に皇帝レズンと話しておきたいことがある。

集められるだけの兵力を集めて、出してくれ。

わかったな。」


一同

「「「はっ!」」」





カルマールは関係各所に指示を出し、少数の騎兵を率いて先行した。


そして、カルマールは各国の援軍に先んじて、ドバン帝国に入った。


ドバン帝国は国内の兵力をかき集め、戦いの準備に大忙しだ。


カルマールの来訪を知ったレズンは側近とともに出迎えに出た。


レズン

「カルマール王!

よく来てくれた!

貴君の迅速な対応に感謝する。」


カルマール

「緊急事態ゆえ、非礼をお許しを。」


馬から飛び降りるカルマール。


レズン

「気にする必要はない。

共に戦う同志に儀礼は不要だ。

これが資料だ。」


カルマール

「・・・狂嵐のボウザーの時の5倍以上か。

信じがたい戦力だな。」


レズン

「まだ不確かな情報も多い。

誤差はあると理解してくれ。」


カルマール

「承知した。

これが新生ドバン王国軍の戦力見込みだ。

私が出た時点では編成が終わっていなかったので、見込みでしかないが。」


カルマールは書面をレズンに渡した。


レズン

「これほどの戦力を!

さすがです。」


カルマール

「他にも考えつく限りの手は尽くした。」


レズン

「ありがとうございます。

新生ドバン王国の国王がカルマール殿で良かった。」


カルマール

「それは私も同感です。

レギンでは対応を誤ったでしょう。

ですが、両国の戦力を束ねてもまだまだ足りません。」


レズン

「もっと協力を集める必要があります。

カルマール殿のお力をお借りしたい。」


カルマール

「世界各国が認めるリーダーが必要です。

各国が兵力を預けたい、そう思える存在でなければならない。

そして、その役目は我々では担えない。」


レズン

「あの男か、、、

確かに世界の命運を託せるのはあの男しかいないだろう。」

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