魔王進攻

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今回はレズン視点です。

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ここはドバン帝国の皇居。

皇帝レズンは多忙な日々を送っていた。


レズン

「ようやく最悪の事態を脱したと思ったらこれか!」


先代皇帝であるレギンの支持者からはレズンの評判はすこぶる悪い。

栄光あるドバン帝国の歴史に泥を塗った。

世界の覇者であるドバン帝国が小国に迎合するなどあってはならない。

そんな批判をしてくる。


本当に食糧危機に陥っていた時は大人しかった。それがレズンの決断と行動力により、食糧を分配することに成功し、大量の餓死者を出さずに済んだ。


すると、今まで大人しくレズンに従っていた連中が好き勝手を言い出した。

中には過激な行動に出るものもいる。

レズンを蔑ろにしようとする動きもある。


四方八方敵だらけ。

今も、どさくさ紛れに帝国の資金を横領した貴族を粛清したところだ。


レズン

「まだ予断を許さない状況には変わらないというのに。

これ以上、国力を落とせば、他国からの侵略もあり得る。そんな時に国内でくだらんことをしてくれる。」


ダッダッダッダッダッダッ

兵士が部屋に駆け込んできた。


側近

「何事だ!」


兵士

「こ、こちらを陛下に。」


兵士が肩で息をしながら、1枚の書状を差し出した。

レズンは受け取り、書状に目を通す。


レズン

「最悪だな。。。」


側近

「何があったのですか?」


レズン

「魔王本人が幹部を引き連れて海に出たらしい。目標はおそらくノルマン。」


側近

「なっ!?

まことでございますか!?」


レズン

「確認が必要だ。

会議室に大臣たちを集めろ。

それと情報収集だ。

情報の真偽、

いつ頃上陸しそうなのか、

魔王軍の規模は、

なんでもかまわん。

調べられるだけ、調べさせろ。」


側近

「承知しました。」


一気に慌ただしくなった。




そして、会議室。


レズン

「魔王が攻めてくる。

幹部ではなく、本人との情報だ。

早急な対応が必要だ。」


側近

「事実なのでしょうか?

まずは確認した方がよろしいのでは?」


レズン

「事実かどうかはわからん。

確認は急がせている。

だが、確認の為に待つ時間が惜しい。

事実であるとの前提で動くぞ。」


側近

「もし間違いだったら?」


レズン

「間違いだったら喜ぶだけだ。

確認を待たずに動く。

いいな。」


側近

「どの程度の軍を用意しましょう?」


レズン

「最大限だ。

打てる手へすべて打つ。」


側近

「では、

西側各国にも援軍を依頼致します。」


レズン

「最大限と言ったのだ。

カルマール王、

スノーデン王国、ジプート連邦、リズムリア王国、セントラル大陸すべての国に援軍を依頼する。」


側近

「それはさすがに難しいのでは。

ようやく停戦したばかりです。」


レズン

「難しいことなど百も承知だ。

だが、生半可な対応で魔王に勝てるものか!

各国の軍を出させる。

そのためならばなんでもしよう。

なりふり構っていられる状況ではない。」



こうして、レズンの判断により、各国に鳥が飛ばされた。使者も走らせたがその到着を待ってもらわれては困るのだ。

軍を組織し、動かすには時間がかかる。

軍が大きければ大きいほどかかる時間は増えていく。


初動の速さ。

すべてはそのために。



レズンの指示により、ドバン帝国は対魔王軍に向けた体制を整えていった。


最初はレズンの判断に懐疑的だった連中も、徐々に魔王軍の規模についての情報が入るにつれ、レズンの指示を聞くようになっていった。


かつて不動のエベレストとの戦いでは、ドバン帝国の総力を挙げて挑んだが敗れた。

そして、今。


当時よりもドバン帝国の国力は大きく落ちている。

国は二つに割れ、スノーデン王国には領地を奪還された。


満身創痍のドバン帝国単体で魔王軍に勝てる訳がない。

レズンが即座にそう判断したことにより、人類史上最大の軍を編成する時間を稼ぐことが出来たのだ。

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