峠の茶屋

パエルモ

「まずは紙が高い。

もっと価格が安くなければ、料理の紹介には使えないだろう。

そして、製本化。

さすがに文章だけで調理法を説明するのは難しい。しかし挿し絵などを入れると写本が更に難しくなる。

最後に読めないという問題だ。

識字率はそこまで高くない。

十分な教育を受けた人間など、ほんの一握りだ。それでは料理を広める効果が期待出来ない。」


「さすがに製紙業から手をつけるのはちょっと大変過ぎますね。」


オリバー

「単純に蕎麦料理の店を出店してみてはいかがですか?

食べれば美味しいのですから、食べられる場所を用意すれば広まるかと思います。」


パエルモ

「だが、いきなり蕎麦料理の店を出しても人は集まるか?

それほど簡単ではないだろう。」


オリバー

「満腹亭の系列店にすれば注目されること間違いなしです。

アキラにとっても新しい食材を扱う店はメリットがあるだろ?」


「嫌ですよ。

今回は試作品レベルで皆さんに出しましたけど、蕎麦の専門店として出すなら、この完成度じゃダメです。日替りの変わりダネとして出すならいいかなってレベルです。

蕎麦はこだわりだすと奥が深いから、手を出すつもりはないですよ。

やるなら、ちゃんと研究しないといけませんし、そんな余裕が今のうちにはないですからね。」


子どもが出来て、人手不足って言ってる時にパエルモで蕎麦屋なんて始められないよ。


オリバー

「そうか。

やれば、うまくいくと思ったんだが。」


ガロッソ

「本人がやらないと言っている以上、無理でしょう。だが、蕎麦料理の店を出すというのはありだと思う。

後はどうやって客を集めるかだが、、、」


「それなら、峠の茶屋みたいなのはどうかな?」


パエルモ

「峠の茶屋とはなんだ?」


「街中じゃなくて、街と街の中間地点とかで、飲食店をするんです。

例えば、ヘーデン王国との国境付近とか。

それなら、街道を行き交う人たちは立ち寄るでしょ。

蕎麦の宣伝には十分じゃない?」


パエルモ

「悪くない考えだな。

ヘーデン王国との国境付近には兵士の詰所がある。その周辺は安全だからという理由で商人たちも夜営のテントを張ると聞いている。そこに蕎麦屋があれば食べるかもしれないな。」


ガロッソ

「馬車での移動は何日もテント生活が続きます。もし途中でうまい飯が食べられるなら、大抵の商人や護衛たちは飛びつきます。」


オリバー

「蕎麦を食べれば、もうすぐパエルモに到着するとか、パエルモを出る時は最後は蕎麦を食べる。

そういう習慣が出来れば、蕎麦も根付くのではございませんか。」


パエルモ

「よし、その方向で進めよう。

商人や護衛の冒険者たちが蕎麦を広めてくれるだろう。

最初は蕎麦の生産量も少ないだろうからな。」


話はまとまったみたい。


本当はパエルモ伯爵が蕎麦の種や栽培に詳しい人を手配するって言ってたけど、スケジュールが気長過ぎたので、

畑の基礎整備、

種、

指導員の確保は僕がやることにしました。


パエルモ伯爵は蕎麦畑で働く人材の確保と、ヘーデン王国との国境付近の兵士詰所の整備。

それと、蕎麦料理専門店で働いてくれる料理人の雇用。


分担して作業を進めることにしました。




蕎麦の種の買い付けと栽培を教えてくれる人の確保はデジーマで行った。

今回はホンダ公爵も少し渋い顔をしていた。


ホンダ

「蕎麦も立派な輸出品だからな。

パエルモで栽培されて、輸出が減るのは好ましくないんだが。」


「でも、蕎麦を食べるなら、鰹節や醤油は欠かせません。そちらの輸出量のアップにつながると思いますよ。」


ホンダ

「ハッハッハッ、商売上手になったな。

まぁ、私が拒否をしたところでいずれ手に入るものだ。

協力しよう。」


「有難うございます。」


ホンダ公爵の助力があれば、一瞬で手配は整いました。


ちなみに、畑の整備は雇った蕎麦栽培の指導員の指示を受けながら、ハナが1日で終わらせました。


パエルモ伯爵に報告したら、早過ぎるって頭を抱えてたよ。

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