蕎麦百珍
そして数日後。
場所は商人ギルド。
ギルドマスターのオリバーさん。
それとパエルモ伯爵。
それからパエルモに住む有力商人たち。
10人かな。
もちろんガロッソさんもいるよ。
オリバー
「今日は集まってくれてありがとう。
パエルモ卿より新しい食材についてお話がございます。」
パエルモ
「まずはこれを見てくれ。
アカツキ王国の商人から勧められた『蕎麦』というものだ。
諸君らは見たことあるか?」
ガロッソ
「乾麺に加工されたものなら販売したことがございます。アカツキ王国から輸入した物でしたので高級品になっていましたね。」
パエルモ
「そうか。
この蕎麦を栽培しようと考えているんだが、どう思う?」
商人
「素晴らしいお考えと思います。」
商人
「輸入品をここで作れるなら販売のチャンスです。」
パエルモ
「ガロッソはどう思う?」
ガロッソ
「いくつか課題があるかと。」
パエルモ
「聞かせてみよ。」
ガロッソ
「はっ。
まずは栽培。
さすがに種子があるだけでは難しい。
それから加工。
私が販売したのは乾麺ですが、どのような加工方法が適切かも検討が必要です。
そして、販路。
どのように食べていいのかもわからない食材を珍しさだけで売るのには限界がございます。需要喚起は必要と考えます。」
パエルモ
「私もガロッソと同意見だ。
そこでアキラを連れてきた。
知っていると思うが満腹亭のオーナーであり、料理や食品のスペシャリストだ。
更にアカツキ王国の事情にも明るい。
アキラの見解を聞きたい。
頼めるか?」
僕
「まず、栽培についてですけど、比較的強い植物なので育てやすいみたいです。
専門の農家を連れてきて指導してもらうことも可能です。
まぁ、気候とか土壌とか、色々な要素があるから、実際に育ててみないとわからないってところです。
それから加工。
種子の状態が保存や運搬にも向いています。
種子の状態をすり潰して粉にして使うのが一般的です。
粉をこねて麺を作るのは職人じゃないと難しいと思います。
麺に加工して乾燥するのもありです。
乾麺なら保存も出来るし、調理も茹でるだけだから簡単です。
後は販路だけど、食べ方を広める必要があるかなと思います。
何に使ったらいいかがわからない状態だと売れないと思いますので。
ちょっと食べ方を紹介しますね。」
僕は料理をいくつか用意した。
僕
「まずは麺料理。
ざるそば、天そば、鴨せいろ。
麺は冷たくても、温かくても美味しいですよ。」
パエルモ伯爵や商人たちが試食する。
パエルモ
「美味しい。
スープやつけ汁との相性が良いな。」
ガロッソ
「小麦の麺とは違って、独特の香りがあるな。」
僕
「これは蕎麦8、小麦2で作った、二八蕎麦っていう麺です。
アカツキ王国だと蕎麦だけで麺を作るんだけど、技術が必要だからけっこう難しいですよ。
それと、麺以外にも使えるので、いくつか用意しました。
これは蕎麦粉で作ってます。」
ガレット、ポタージュ、パン、ラビオリ。
スイーツから、スープ、パン、煮込み料理まで、使用用途の広さを示す。
パエルモ
「この風味を活かせば美味しい料理になるんだな。」
オリバー
「だが、使い方を知る者が少ないのが課題ですね。」
ガロッソ
「アキラ、
何か蕎麦の使い方を広める案はないか?」
僕
「う~ん、
百珍物なんてどうですか?」
パエルモ
「百珍物?
初めて聞く言葉だが。
なんなんだ?」
僕
「豆腐百珍とか、蒟蒻百珍。
ある食材の調理法をたくさん紹介する料理本です。」
パエルモ
「料理を紹介するだけの本、、、
あまり現実的ではないな。」
僕
「ですよね~。」
この世界だと紙ってまだまだ高価なんだよね。しかも活版印刷もないから、基本的に本は全て手書き。コピーも出来ないから写本。
そりゃ高いし、簡単に料理本も作れないよね。
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