ゲレーロ

ある日。

満腹亭のキッチンで片付けをしながら。


カミラ

「サクラは優秀ですね。

どんどん学習していきますよ。」


「想定以上だね。

こんなに働けるようになるとは思ってなかったよ。」


サクラは今日も働いている。

休憩無しに働き続けてくれるから、ものすごい戦力だ。

なお、片付けが終われば、専用のベッドに横たわるようにしてもらった。

最初、特になんの指示もしてなかった時は、作業を終えた場所でそのまま立っていて、翌朝びっくりすることになった。


見た目が少女なので粗雑に扱うことも出来ない。結果、物置に専用ベッドを置き、仕事を終えたら専用ベッドに横になるようにした。



そんな話をしていると、


マユラ

「アキラ君。

見たことのない家紋の貴族が来てるよ。

どうする?」


マユラさんが呼びに来てくれた。


「すぐ行くよ。」


相手は貴族。

無視は出来ない。




満腹亭の前に見慣れない馬車が停まっていた。そして、見たことのない男。

長身で若い男だ。

僕よりも年下かな。


若い男

「お前がアキラか。」


「そうですけど、、、

あなたは?」


若い男

「私はゲレーロだ。」


誰だよ?

つっこんでいいの?

家を教えてよ。


「えっと、、、

それで、どういったご用ですか?」


ゲレーロ

「そんなこともわからんのか。

嘆かわしい。」


誰かわからない貴族の用事なんて、わかる訳ないでしょ。


「出来れば教えて欲しいんですけど。」


ゲレーロ

「このゲレーロが来たんだぞ。」


誰なんだよ?



カミラ

「ゲレーロ様!」


「カミラさんの知り合い?」


僕は小声で尋ねた。


カミラ

「私が縁談を断ったオチョロイ伯爵のご子息様です。」


「あ~~~!

なんか聞いたことある名前な気がしたんだよね。」


ゲレーロ

「何を話しているんだ!

私のカミラ様に気安く話しかけるな。」


カミラ

「ゲレーロ様。

私はあなたのものになった覚えはございません。

それにアキラ様は世界的な商人です。

あまり不遜な態度はとらない方がよろしいかと思います。」


カミラさんが明らかに不愉快そうにしている。


ゲレーロ

「ハッハッハッ、ご冗談を。

私とカミラ様の仲じゃないですか。

商人風情が私たちの邪魔をして良い訳がないでしょう。」


なんか、会話が噛み合ってない気がする。


カミラ

「とにかく、

お帰りください。

私はあなたとの縁談は断っております。」


ゲレーロ

「可哀想なカミラ様。

その男に言わされているのですね。

私との結婚を断る理由など、どこにもないでしょう。」


どうしてそうなるの?


カミラ

「私の意思です。

ゲレーロ様。

お1人でお帰りください。」


カミラさんの言葉は丁寧だけど、完全に怒っているね。


ゲレーロ

「許せんな。

アキラよ。

お前に決闘を申し込む。」


「へ?」


ゲレーロが剣を抜き、僕に剣先を向ける。


ゲレーロ

「私に恐れをなして逃げ出すなよ。」


「えっと、、、

決闘って何をするんですか?」


ゲレーロ

「心配するな。

私の戦いに相応しい舞台を用意してやろう。

首を洗って待っていろ。

さらばだ。」


なんか颯爽と馬車に戻っていった。


なんと言うか理解が追いつかないんだけど。


カミラ

「申し訳ございません。

面倒なことに巻き込んでしまって。」


「カミラさんが悪い訳じゃないから、気にしなくていいよ。

それよりも状況を説明してほしいんだけど。」


カミラ

「えっと、ですね。

アキラ様は決闘を申し込まれたんです。

普通は貴族同士でしかやりませんし、そもそも最近は決闘自体、ほとんどやりません。

かなり時代錯誤の申し込みです。」


「決闘なんて本当にあるんだね。」


カミラ

「最近は決闘ではなく訴訟で争いますから、滅多にありませんよ。

まれに田舎貴族同士がもめて行うぐらいしか、最近は行われません。」


なかなか厄介なことになりそうだね。

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