ベルフォームの工場

ある日。

ベルフォームのクラリネ商会にて。


「こんにちは。

オルネさん、いますか?」


店員

「アキラ様、

少々お待ちください。」


オルネさんの部屋まで案内してもらった。


オルネ

「そろそろ来る頃かなって思ってたよ。

前に頼まれてた工場の件、ある程度土地の目処は立ったよ。」


「それなんだけどさ、これを見てくれる。」


僕が取り出したのは金属の柱のような物。

イメージは男性の太ももぐらい。

それをオルネさんに渡す。


オルネ

「重たいわね。

これは何?」


「これは缶詰って言ってね。」


僕がナイフで蓋を切り開けた。

中からはさばの味噌煮。


オルネ

「わざわざ金属の筒に魚の煮物を入れたの?

なんか理由があるの?」


「蓋を開けなければ、1年以上保存が出来るんだよ。」


オルネ

「えっ!?

腐らないの?」


「腐ると膨らんで破裂しちゃうんだけどね。

ちゃんと密封出来ていれば、全然腐らないんだよ。」


オルネ

「すごいわね。」


「食べてみて。」


僕はフォークをオルネさんに渡す。


パク。


オルネ

「美味しいわね。

これが1年以上維持出来るのね。

これはすごい発明だわ。」


「でしょ。

最初は瓶に入れようかと思ってたけど方針転換して、この缶詰工場にしようかと思ってね。

それでバレティアから鉄を仕入れて、新生ドバン王国相手に売る感じかな。」


オルネ

「金属の加工は可能なの?

食品を入れて蓋を閉じるなんて難しそうよ。」


「それは僕に任せてよ。」


オルネ

「鉄の確保は?」


「運送はコーラル商会にお願いするつもり。

バレティアも、平時は鉄も余っていると思うから、セージさんにお願いしてみるつもり。」


オルネ

「第二騎士団の団長か~。

さすが大物と知り合いね。」


「じゃあ、これで動くね。」


オルネ

「了解。完成した缶詰の販売は私たちにやらせてよね。」


「そうだね。

オルネさんも利益出さないとダメだもんね。

そこはお願いするよ。

土地を購入出来たら教えて。

缶詰を作る装置を設置するから。」


オルネ

「わかったわ。」



用意するのは、

缶詰の本体を作る装置、

缶詰に中身を入れる装置、

密封する装置。


中身を入れるのは人でもいいかもね。

正直、僕はメンテナンス可能なラインなんてものは作るつもりはない。

頑丈には作ろうと思うけど、僕の死んだ後にはそれほど興味はないし、僕が生きている間はいつでも作れるからね。


後は、ガロッソさんとセージさんに根回ししておこう。

鉄の供給がバレティアで足りなければ、ベルン王国から運んでもらおうかな。


缶詰が世に出回れば、真似して作る人も出てくるかもしれない。美味しい缶詰が広まれば食卓はより豊かになるかもしれない。


今回は魚の缶詰だけど、他の缶詰もいいかもね。産地で缶詰にして流通させる。

世界各地の味が缶詰になって、世界を飛び回る。素敵だね。


本当は冷凍便で運べたらもっと美味しい物が広まるんだけどね。いかんせん、コストが凄いことになるからね。

いきなりそこまでしなくてもいいかな。


缶詰を作るための装置は出来ている。

他の準備が進んできたら設置しよう。

実際の運営はオルネさんにお任せしよう。

僕には細かい管理なんて無理だからね。




その後。

結局ベルン王国から鉄を運ぶことになりました。僕の作った缶詰装置。

けっこう鉄の消費が激しいんだよね。

缶詰を作る量が凄いことになりました。

元々、内陸部では魚がまったく食べられなかった。それが美味しい魚が食べられるんだから、金持ちが喜んで購入してくれる。


まだまだ先の話だけど、

軌道に乗ってからはベルフォームの一大産業になりました。

工場での雇用も増えたし、魚介類の使用量が増えたので、漁師も増えた。

いつの間にか缶詰工場はベルフォームになくてはならない存在になっていった。

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