発明家マッソン

翌日。

アリエッタさんが調べてくれた場所へ行ってみた。町外れのおんぼろな家。


「すいませ~ん。」


声をかけると中から、


「ん、なんだ?」


扉を開けて男が出てきた。

黒犬っぽい獣人だ。

痩せこけた体。

ボサボサの頭をポリポリしている。

おまけに酒くさい。


「マッソンさんですか?」


マッソン

「ああ、そうだ。

俺に何か用か?」


「マッソンさんが発明家だとうかがったので、お願いがあり来ました。」


マッソン

「俺に会う為にわざわざ島外から来たのか。

ご苦労なことだな。

だが、帰れ。

お前の願いを聞いてやる義理はない。」


「話だけでも、、、」


マッソン

「酒だ。

酒を持っているか。

酒があるならくれ。

飲んでいる間に、話ぐらいは聞いてやる。

どうだ。」


僕はマジックバックからワインのボトルを出す。

奪い取るように持っていき、コルクを開けるマッソンさん。


この人、ダメだろうな~、という雰囲気がプンプンする。


さっそくコップに注いで飲み始める。


マッソン

「うまいな。

こんなうまいワインは初めてだ。」


「じゃあ、話を聞いてもらえますか?」


マッソン

「どうせ、夢のような道具を発明してくれって内容だろ。だいたい俺に声をかけてくる奴はそうなんだ。

だがな。

そんな夢のような道具は作れねぇんだよ。」


「作れない?

どうしてですか?」


マッソン

「あのな。

そもそもだな、

発明家は作り方がわかるだけなんだ。

何かを作りたいって考えた時に、

必要な材料と加工の工程がわかるだけ。

だから、素材を用意しないと何も出来ないの。

そして、このハイムの島じゃ、たいした物は手に入らない。何もない島だからな。

だから、何も作れないんだよ。」


「でも近くのディアゴまで渡ればいいんじゃないですか?

あそこは大きな島だから、いろんな物が手に入るだろうし、ディアゴで無理ならパウロ。

パウロはダンジョンがあるから素材集めにはもってこいですよ。」


マッソン

「なんで俺が島から出ないといけないんだよ!」


「いや、発明家の力を活かそうと思ったら、それがベストかなって思って。」


マッソン

「ディアゴに行っても素材が集まる保証はないだろ。

それに素材があっても加工出来るとは限らないし。」


言い訳ばっかりだ。

『発明家』はチャレンジしないと何も出来ない職業なんだと思う。

なにせ、今、世の中にない物を発明するんだからね。

そう考えると、マッソンさんの考え方は発明家の真逆だ。

完全な宝の持ち腐れだね。


「マッソンさん。

僕と契約しませんか?」


マッソン

「契約?」


「そうです。

報酬はお金と酒。

漁師の1ヶ月分の収入相当のお金と、

今飲んでいるワイン10本。

やってもらうことは、

1週間、僕の言うことにすべて従うこと。

もちろん命の危険のあるようなことはさせません。発明家の可能性にチャレンジするだけです。

どうですか?

悪くないでしょ。」


マッソン

「20本だ。

ワインを20本用意しろ。

それなら契約してやる。」


「契約成立ですね。」


僕はずかずかと歩み寄り、マッソンさんの腕に奴隷の腕輪を着ける。


マッソン

「なんだこれは!?」


「口約束じゃ、本当に僕の指示に従ってくれるとは限らないでしょ。

だからそれを着けました。

じゃあ行きましょうか。」


マッソン

「えっ、どこへだ?」


僕はダンジョンマップを使って、パウロのダンジョンに転移する。


マッソン

「なんだ!?

何が起きてるんだ??」


「ここはパウロにあるダンジョンです。

ここでレベルを上げてもらいます。

発明家は制約が多いって言ってたけど、レベルを上げると、より便利なスキルが手に入るからね。

それを目指します。」


マッソン

「待ってくれ。

発明家は非戦闘職だ。

ダンジョンなんて無理に決まってる。

死んじまうよ。」


「大丈夫です。

命の危険にはさらしませんから。

問答無用で行きますよ。

そういう契約ですからね。」


ダンジョンに突入だ。

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