困ったマヘリア
ある日の午後。
満腹亭の営業が終わった頃。
マヘリア
「こんにちは~。
アキラ君いる?」
アリエッタ
「こんにちは。
アキラ君は今、奥で皿洗いしていると思うよ。中で待ってて。」
僕
「必殺!
一撃乾燥!」
おふざけです。
僕の結界魔法は通す物と通さない物を細かく決められる。
つまり、水だけを通さない結界を通過させれば一瞬でお皿の水切りが完了するのだ。
凄いでしょ。
ただし、布みたいに水を吸い込んでいる素材の場合、生地への負担を考えると使えないんだよね。
アリエッタ
「アキラ君。
マヘリアさんが来たよ。」
僕
「あ、じゃあ、すぐに行くね。
洗い場、お願いしていい?」
アリエッタ
「わかった。
後はやっとくね。」
店内に入るとマヘリアさんが待っていた。
僕
「すいません。
お待たせして。」
マヘリア
「いいの、いいの。
私がいきなり来ただけだから。」
僕
「それで、今日はどうしたんですか?」
マヘリア
「実はさ~、
魔動車が壊れちゃってね。
アキラ君なら修理出来ないかな~、と思って来たんだ。」
僕
「さすがに魔動車の修理は出来ないと思いますよ。」
マヘリア
「やっぱり。
まぁ、ダメもとで聞きに来た感じなのよ。」
僕
「もう、廃車にするしかないんですか?」
マヘリア
「一応、製造元のメルセ工房に修理の依頼はしようと思っているんだけど。
メルセ工房は新生ドバン王国にある、世界で唯一、魔動車を作っている工房なのよ。
修理の場合は、
職人に来てもらって、
故障の原因を調べて、
次回、取り替え用のパーツを持ってきて修理するって流れになるから、修理が完了するまで数ヶ月かかるのよね。」
僕
「そうなんですね。
前から思ってたんですけど、魔動車って、完全にオーバーテクノロジーと言うか、明らかに他の物と比べて技術力がずば抜けてますよね。」
マヘリア
「そうね。
聞いた話だと、過去にいた『発明家』が作ったらしいわ。『発明家』はスキルの力でとんでもない物を作れたそうよ。」
この世界らしいね。
僕
「そうなんですね。
だから世界唯一なんだ。
じゃあ、そのメルセ工房まで魔動車を持って行けば、すぐに修理出来るんですかね?」
マヘリア
「まぁ、職人のスケジュールもあるからすぐにとは言えないけど、大幅に期間は短縮出来るんじゃない。」
僕
「じゃあ、今度ドバン方面を行く時についでに持って行きましょうか?」
マヘリア
「ありがとう!
本当にいいの?」
僕
「特別サービスですよ。」
マヘリア
「じゃあ、
出発する日が決まったら教えてよ。
私とヒナタ、それにミレイとマヒルも同行させてもらうわ。」
僕
「修理の為にわざわざマヘリアさんが行くんですか?」
マヘリア
「せっかくだから、もう1台購入しようかと思ってね。
やっぱり魔動車のスピードは魅力的よ。
ヒナタに運転してもらえば帰りは一瞬だし。」
ヒナタさんは『リターンポイント』のスキルを持っている。確かに行きは魔動車、帰りはリターンポイントだと、驚異的な輸送力になるね。
僕
「さすがコーラル商会。
儲かってるんですね。
じゃあ、週末に出発でもいいですか?」
マヘリア
「ありがとう。
問題ないわ。
このお礼はどこかでさせてもらうわね。」
マヘリアさんはお礼を言って帰っていった。
そして週末。
コーラル商会を訪れると4人が待っていた。
マヘリア
「アキラ君、ありがとう。
こっちよ。」
マヘリアさんに案内されて車庫へ。
マヘリア
「じゃあ、魔動車を運んでくれる。」
僕
「わかりました。
ん?
荷物入ってますけど?」
魔動車の荷台が荷物でぎっしりだ。
マヘリア
「せっかく新生ドバン王国まで行くんだから、手ぶらじゃもったいないでしょ。
商人ならこれぐらい貪欲じゃないと。」
ちゃっかりしてるね。
僕
「勉強になります。」
マヘリア
「まぁ、商人としてのランクはアキラ君の方が上なんだけどね。」
僕
「商売が苦手なAランク商人なもんで。」
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