オチョロイ伯爵
オルネさんに別れを告げて帰宅。
もう夕食の時間なので、さっそくみんなで食べる。
カミラさんも一緒だ。
僕
「今日はどうだった?」
カミラ
「初めてのことばかりで新鮮な経験でした。
慣れないのでご迷惑をおかけしてしまいましたが。」
マユラ
「カミラさん、
吸収が速くてすぐに戦力になってくれたよ。」
カミラ
「みなさんが優しく教えてくださったので。
こういった定食屋さんを利用したことがないので、勉強になりました。」
アリエッタ
「うちはむちゃくちゃ特殊だからね。
他のお店と同じと思っちゃダメよ。」
なんか馴染んでるね。
まだ距離はあるけど、けっこう気さくに話をしている。
カミラさんもコミュニケーション能力高そうだもんね。
僕
「あのさ、オチョロイ伯爵のことを教えてもらってもいいかな?」
カミラ
「えっ!?」
カミラさんが驚いて目を見開く。
カミラ
「さすがアキラ様です。
昨日の今日で、もう私がオチョロイ伯爵の息子との縁談を断ったことまで調べられたのですね。
想像を遥かに超える情報収集能力です。」
僕
「ちょっと噂を聞いてね。
でも、そんなにダメな相手だったの?」
カミラ
「ダメ、という訳ではありません。
伯爵家の長男で年齢は私と同い年です。
しかも、父とオチョロイ伯爵の利害が一致したのでトントン拍子に話は進みました。」
ルーシュ
「しかし、失礼ながらその年齢でフリーだったということはよほどの事情があるのではございませんか?」
カミラ
「フリーではございません。
某騎士爵令嬢と婚約しておりました。
それを破棄して私と結婚させようとしていたのです。」
僕
「わざわざ婚約破棄させてまでカミラさんと結婚させようとしたの?」
カミラ
「はい。
それには政治的な事情があるんです。」
僕
「どんな事情なの?」
カミラ
「オチョロイ伯爵は、
エドワルド陛下の学友であり、現在は側近の1人として働いています。今回の新生ドバン王国への外交にも帯同しています。
そして、オチョロイ伯爵はつい最近まで子爵だったんですが、謀反に協力した貴族を粛清した際に、空いた爵位を与えられ、伯爵になり、新たな土地を与えられたんです。」
僕
「順風満帆な感じだね。」
カミラ
「オチョロイ伯爵としてはそうです。
ですが、息子のゲレーロ様はあまり優秀ではないため、領地運営をサポート出来る妻がほしいとオチョロイ伯爵は考えているようです。
現在の婚約者である騎士爵令嬢には、そんな能力は期待出来ません。領地運営などの知識も経験もございませんから。
そこでオチョロイ伯爵はベルフォーム伯爵の娘である私を欲しがったようです。」
ルーシュ
「大物貴族であるベルフォーム伯爵の娘であるカミラさんなら英才教育も受けているし、本人以外の周囲にも領地運営に協力出来る人材はたくさんいそうですからね。」
カミラ
「その通りです。
そして、父であるベルフォーム伯爵としてもエドワルド陛下の側近であるオチョロイ伯爵との関係強化は悪い話ではありません。
伯爵家の正室なら体裁も良いですからね。」
アリエッタ
「理屈はわかったけど、もう婚約してるんでしょ。そんなに簡単に破棄なんて出来るの?」
カミラ
「騎士爵令嬢との婚約破棄ぐらいなら、いくらでも方法はございます。
一番穏便な方法はお金を渡して、婚約をなかったことにする、とかですかね。」
アイラ
「だが、聞く限り両家にメリットのある縁談だ。カミラが嫌がる理由がわからないな。」
カミラ
「・・・誤解を恐れずに言えば、
面白くなさそうだから、です。
自由に思いのままに生きるアキラ様の姿を見て憧れたんです。
私も私の意志を持って生きたいと思ったんです。
だから、都合の良い道具としての政略結婚に嫌気がさして、家を飛び出しました。
貴族としては失格ですね。」
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