和平合意

しばらくもめていたエドワルド王も、戻っていった。


そして、


アーサー

「そろそろ行くか。」


僕とアーサーさんは部屋を出た。



僕たちが会場に到着すると、

会場には皆そろっていた。


アーサー

「お待たせして申し訳ございません。

和平案を持って参りました。」


アーサーさんは議長であるエドワルド王、

カルマール王、

皇帝レズン、

それぞれに渡した。


それぞれが側近を交えて和平案に目を通す。

沈黙の時間が流れる。


新生ドバン側近

「我々がなぜ、ここまで譲歩せねばならんのだ!」


ドバン帝国側近

「失う利益が多過ぎる!」


双方の側近たちから不満の声があがる。

それを見たエドワルド王がにんまりする。


エドワルド

「静粛に。

アーサーの案に対する双方の見解を聞かせてください。

まずは、カルマール王のご見解を。」


カルマール

「私はアーサー殿の案に賛成です。」


新生ドバン側近

「陛下!?」


新生ドバン側近

「御再考を!」


カルマール

「静かにせよ!

これは私の決定だ。

アーサー殿の和平案は見事である。

異議のある者は名乗り出よ。

今、名乗り出ない者は今後二度と文句を申すな。」


会場が静まりかえる。

異様な雰囲気が会場を包み込む。


エドワルド

「カルマール王の見解は承知しました。

では、

皇帝レズンの見解をお聞かせ願おう。」


レズン

「・・・同意しよう。

アーサー殿の案に反対する理由がない。

今後、どれだけ時間をかけて交渉しても、これ以上の結論は得られないだろう。

進めてもらいたい。」


エドワルド

「双方合意ということで、、、

本当に良いのだな?」


カルマール

「もちろんです。」


レズン

「二言はない。」


エドワルド

「わかりました。

では、文書を整えて、最終確認後、調印式に移ろう。

スケジュールはカルマール王に任せて良いかな?」


カルマール

「もちろんでございます。

それと、今回の停戦合意についてですが、

調停役を務めて頂き、合意まで尽力頂いたエドワルド王に感謝と敬意を示して、

『エドワルド合意』と呼びたいのですが、ご許可を頂けますか?」


エドワルド

「私の名前を使うことを認めよう。」


カルマール

「有難うございます。

レズン殿も問題ございませんか?」


レズン

「もちろんだ。

エドワルド王には感謝の意を示したい。」


エドワルド王がニヤニヤしている。

歴史的な合意に自分の名前がついたのが嬉しいんだろうね。

ただ、もう少しポーカーフェイスは必要だと思うよ。


カルマール

「今日の夜には調印式を行えるように準備を整えます。

明日は食糧の取引について協議を行い、夜には晩餐会を開催致します。

ご準備のほど、宜しくお願いします。」



それから、

文官たちは忙しそうに動き回っていた。

そして、夜遅くに『エドワルド合意』の調印式が行われた。

エドワルド合意はあくまでも停戦合意に過ぎない。完全な和平にはまだ時間がかかる。

それでも、ドバン両国による戦争が終結したことは世界的にも大きな出来事であった。





そして翌日。

かなり緊張してきた。

僕が呼ばれた理由は食糧問題への対応のためだ。昨日までは座っているだけだったんだけど、今日は主役の1人と言っても過言ではない。


「あ~、緊張してきた、、、」


アーサー

「安心しろ。

私もサポートしてやる。

別に難しい交渉も必要ない。

決めてきた値段を提示して、そこから購入する量をドバン帝国が決めるだけだ。

簡単だろ。」


「他人事だと思って、、、

僕にとってはこんなに大勢の前でしゃべるだけで心臓バクバクなんだよ。」


アーサー

「まぁ、慣れるしかないぞ。

何事も経験だ。」


「そりゃ、わかっているけど、、、」


必要な書類とかはガロッソさんに協力して作ってもらっている。

同席もお願いしたんだけど、それは全力で断られた。

は~、気が重いよ。

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