宴の夜

その日の夜。

宴会が開かれた。


主催者はカルマール王。

主賓はエドワルド王。

リズムリア王国一団の席順はエドワルド王が決める為、アーサーさんや僕は末席だ。

普通なら王族のアーサーさんはもっと上座だと思うけど。


料理は本格的なコース。

なかなか綺麗に仕上がっている。

手間をかけているし、

食材も色々なところから集めている。


後は鮮度かな。

特に海鮮。

どうしても運ぶのに時間がかかるからね。

用意出来ただけすごいってことなんだろうけど、塩漬けを塩抜きして使っているから、ちょっと違和感がある。まぁ、僕のマジックバックじゃないと魚をそのままは運べないから、塩漬けは仕方ないけどね。


カルマール

「アキラ殿は料理のスペシャリストと聞いています。

是非、

忌憚ないご意見を聞かせてください。」


カルマール王が話題を回していく。


「もう少し鮮度が欲しいですね。」


カルマール

「我が国は内陸の国。

海のあるリズムリア王国のようにはいかないのですよ。」


「ベルフォームで長期間運ぶことを前提に、ちゃんと加工すればもう少し美味しい魚を食べられるように出来ると思います。」


カルマール

「さすがですね。

是非、お力をお借りしたいですね。」


ちょっと考えてみようかな。

工場をベルフォームに作って、コーラル商会に運んでもらえばいいかも。

缶詰のイメージかな。

缶詰はこの世界ではない。

金属加工の技術と価格の問題だね。

ジャムみたいに瓶詰めにして、更に人造スノーストーンを使った冷蔵便で運べば、けっこう良い状態でドバン王国まで運べると思う。

ぬか漬け、味噌漬け、オイル漬け、どんなのがいいかな?


もちろん、会話の大半は社交辞令や外交的なやり取り。

僕にはよくわかりません。

僕が話をしたのは料理の時だけ、他はスルーしてたから、何を話していたのかはまったくわからないまま、終了していました。



その日の夜。

僕はアーサーさんの部屋に。


「やっぱり、気を使うと疲れるね。」


アーサー

「どこがだ。

ほとんど無言で飯食って、

飯の問題点を指摘して、、、

普通は「とても美味しいです」で良いんだよ。」


「でもな~、

全体的には美味しかっただけに、魚の扱いだけが残念だったんだよね。」


コンコンコン

ノックの音だ。


アーサー

「どなたかな?」


カルマール

「カルマールです。

少しよろしいでしょうか。」


アーサー

「もちろんです。

どうぞ。」


カルマール王が単身でやってきた。

いいの?

王様がこんなに自由に動き回って。


カルマール

「アキラ殿もいらっしゃったのですね。」


「どうも。」


カルマール

「ドバン帝国でもお会いしましたよね。」


あの時は兵士のフリをしてたんだけど。

バレてるの?

僕が動揺していると、


カルマール

「あの時、アーサー殿やセージ殿と対等に話をしていて、他の騎士とは明らかに待遇が違っていたからね。

気になっていたんだよ。

それがアキラ殿だった訳だ。」


アーサー

「アキラがあの時、あの場所にいたことは内密にお願いしたい。」


カルマール

「承知しました。」


アーサー

「それで、私に何かご用かな?」


カルマール

「腹を割った事前打合せをしておきたくてね。エドワルド王がいらっしゃるのは想定外でしたよ。」


アーサー

「こちらにも色々と事情があってね。」


カルマール

「アーサー殿も大変ですね。

さて、

我が国は停戦合意と国境の策定が出来れば良いと思っています。」


アーサー

「どこに国境ラインを引くか次第でしょう。

あまり欲を出し過ぎては、決まる話も決まりませんよ。」


カルマール

「承知しています。

ですが、家臣たちの中にはここぞとばかりに要求しようとしている連中がいましてね。

頭が痛いですよ。

エドワルド王はどうなさるおつもりですか?」


アーサー

「まずはなんとしても停戦合意を結ばせたいとお考えです。

そして、国内の食糧を動かせるようにかき集めています。西に売って利益と恩を得ようとしているのでしょう。

成果を出したくて仕方がないという気持ちが先行しています。そこが不安ですね。」


カルマール

「それはひしひしと感じました。」

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