大きな決断

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今回はマサキ視点です。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ここはベルフォーム。

ようやくアカツキ大陸からセントラル大陸に戻ってきた。


アカツキ大陸に渡って、

クラスメート探しは大きく進んだ。

サカーイではヒロキに会えた。

そして、セントラル大陸にいる6人の居場所もわかった。

もちろん今もその場所にいるとは限らない。

でも、探すヒントにはなるだろう。


そして、何よりもマイを助けられた。

マイの存在は大きい。

俺を支えてくれている。


パエルモのアキラ、

バレティアの百田先生、

2人には進捗を報告しよう。

それから残りのメンバーを探しに行こう。





ベルフォームに到着したのは昼過ぎだったので、出発は明日だ。

今日は明日からの準備をして、早めに休もう。

宿に入って、

買い出しを済ませて、

マイと夕食だ。


食事を食べながら、


マサキ

「どうしたんだ?

元気がないみたいだけど。

どこか体調でも悪いのか?」


マイ

「・・・あのね。

落ち着いて聞いてくれる?」


マサキ

「ああ。」


マイ

「私、、、

できたみたい。

赤ちゃん。

お腹のなかに。」


マサキ

「えっ!?」



心当たりは、、、ある。


デジーマでマイと一緒に旅をするようになり、費用を抑える為に街で宿をとる時は1部屋だった。

一線を超えるのにそれほど時間はかからなかった。

マイが俺のベッドに入ってきた。


その肌に触れた時、、、

俺の理性は吹き飛んだ。


それからも何度も体を重ねた。

当然の結果、と言える。


マサキ

「ほ、本当に?」


マイ

「うん。」


この世界には検査薬などもない。

医者でもなければ、正確な判断は出来ない。


マサキ

「そ、そうか、、、

良かった、、、良かったよ。」


マイ

「ありがとう。

それでね。

相談したいことがあるの。」


マサキ

「な、なんだい?」


動悸が止まらない。


マイ

「私はもうすぐ旅を続けられなくなる。」


この世界の旅は過酷だ。

妊婦や幼子を抱えて続けられるものではない。それにマイは前衛タイプの戦闘職。


マイ

「しばらくは戦闘も一緒には出来ない。」


マサキ

「そうだね。

お腹の子どもの為にも止めた方がいいよ。」


マイ

「うん。

それでね、

旅をやめて、

どこかで落ち着いて生活したいの。

子どもをちゃんと育てたいの。

マサキと一緒に。」



どうしよう?

どうしたらいい?

何が正解なんだ?


頭の中がぐるぐるする。

クラスメートを探す、もう諦めないと決めていた。

でも、、、

マイ、そして産まれてくる子ども。

それを見捨てるのか?

この世界は甘くない。

母子家庭として生きていくのは元の世界以上に大変だ。

だけど、、、

また投げ出すのか?


マサキ

「少しだけ、

少しだけ考えさせて欲しい。

ごめん。

即決は出来ないんだ。」


マイ

「ごめんね。

急な話で驚いたよね。

もちろん、今すぐ決めて、って話じゃないから焦らなくていいよ。

でも、出産の準備もあるから、

その前にはマサキの結論を聞かせて欲しいかな。」


マサキ

「ありがとう。

マイや子どものことは守るから。

絶対に。」


その日の夕食は味を感じなかった。

ベッドで横になっても全然眠れない。

頭の中を同じようなことがぐるぐると回っている。


旅を続ける?

どこかでマイと子どもと落ち着いた生活を送る?

どちらが正しい?


身重のマイを残して旅に出るのは無責任過ぎるだろう。

でも、

奴隷にされたクラスメートを見捨てるのも無責任ではないのか?


どの選択をしていいかわからない。


朝がきた。


マサキ

「おはよう。」


マイ

「おはよう。」


マサキ

「一晩考えたんだけどさ。

フラメル王国のヒルギスを目指そう。

一番近いダンジョンのある街だ。

そこなら俺もマイと子どもを養えるだろ。」


マイが満面の笑顔になる。


マイ

「ありがとう!

マサキ。」


マサキはその笑顔を見て、胸を痛めた。

結論を出した訳じゃない。

ただ、結論を先延ばししただけだ。

どちらにしてもお金が必要だ。

だから、ダンジョンを目指すと決めただけ。

一晩かけて決められたことは、

それだけだった。

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